2022年の冬、新宿の25㎡ワンルームを自分で1回清掃するのに3時間15分かかりました。会社帰りに寄って、終電で家に戻り、翌朝の会議前に頭がぼんやりしていた朝を今も覚えてます。あのとき試しに外注に切り替えて計算し直したら、時給換算で自主清掃のほうがむしろ高くついていた。
民泊清掃を自分でやるか外注に出すか、この判断は月何日稼働しているか、時給をいくらに置くか、物件が自宅から何分かで大きく変わります。都内で3物件(新宿ワンルーム25㎡・浅草1LDK45㎡・大田区ワンルーム28㎡)を兼業で回している立場から、実額と一次情報を突き合わせて損益分岐を書きます。
結論から言えば、月8〜10泊を超えたら外注が合理的、というのが私の3物件の平均値です。ただし条件で崩れます。以下、順番に。
この記事の要点
- 東京都心のワンルーム民泊で1回あたりの外注費は編集部調べで4,000〜7,000円が一般的(広さ・繁忙期・リネン込みかで変動、出典は本文の各社料金表)
- 自主清掃の1回あたり作業時間はワンルームで60〜90分、1LDKで90〜120分が実測目安(自分の3物件平均、移動・洗濯を除く)
- 時給を東京都最低賃金1,226円(2025年10月3日改定)で置くと、自主清掃の実質コストは1回あたり2,500〜4,500円程度になる
- 家主不在型民泊では住宅宿泊事業法11条により住宅宿泊管理業者への委託が原則義務化されているため、清掃だけの話ではない
- 月8〜10泊が損益分岐の目安。それ未満なら自主が残せる、超えたら外注に振ったほうが本業と生活が回る
下の判断をひとつに任せず、条件を入れて業者を比較してから見積もりを取り寄せると、自分の物件だと外注がいくらになるかがすぐ分かります。
まず結論:外注と自主清掃の損益分岐は月8〜10泊が目安
私の3物件を1年分の家計簿から逆算した結果、月の稼働が8〜10泊を超えたところで、自主清掃のトータルコスト(自分の時給+移動+洗濯+消耗品)が外注費を追い越しました。ここでの「コスト」は財布から出るお金だけでなく、平日夜と週末の時間を含みます。
新宿の25㎡ワンルームだと外注は1回5,500円(リネン込み・繁忙期加算なし・2024年秋の見積書ベース)。自主清掃は移動込みで4時間、時給1,500円換算で6,000円相当。月10泊で外注5.5万円、自主6万円。ここで逆転します。
浅草の1LDK 45㎡だと外注が7,500円、自主は移動込み5時間で7,500円相当。ほぼ拮抗ですが、繁忙期割増(後述)が入ると外注のほうが月に数千円上振れするので、繁忙期だけ自分が入る運用にしてます。
要は「稼働が読めない月」と「フル稼働の月」で最適解が違う。年間で固定するより、月次で切り替えられる契約にしておくほうが強い、と今は思ってます。
損益分岐の1枚計算式
シンプルに書くと、こう。(自分の時給×1回あたり作業時間+移動費+洗濯電気水道+消耗品)×月間稼働日数 と、(外注単価+リネンやゴミの追加分)×月間稼働日数 を比べるだけ。
盲点は「時給」の置き方。会社員としての残業時給ではなく、その時間で本業を進められるかどうかで決めるほうがリアルです。私は本業の時間単価を控えめに1,800円で置いてます。
1回あたりの実額比較:外注と自主清掃の内訳
下の表は、都内3物件で実際にかかっている費目を1回あたりで並べたものです。金額は2024年秋〜2025年秋の見積書と家計簿から。金額は自分の物件条件(都心・築浅・広さ)に依存するので、あくまで一例。
| 費目 | 外注(新宿25㎡) | 自主清掃(新宿25㎡) |
|---|---|---|
| 基本料金 | 4,500円 | 0円 |
| リネン交換 | 1,000円(レンタル込み) | 自前・洗濯代 約400円 |
| ゴミ回収 | 含む | 自分で搬出 30分相当 |
| 消耗品補充 | 含む(実費別) | 実費 約300円 |
| 移動時間 | 0円(業者持ち) | 往復90分 時給1,500円で約2,250円 |
| 作業時間 | 0円 | 実働75分 時給1,500円で約1,875円 |
| 合計目安 | 約5,500円 | 約4,825円+自分の疲労 |
表だけ見ると自主のほうが安く見えます。ただ、金曜21時に会社を出て新宿の部屋に着くのが22時、清掃を終えて家に戻るのが翌0時半。この時間帯を金額化していない前提の数字です。私はもう払いたくない、というのが正直な感想。
参考までに、以前まとめた東京の1回あたり実勢価格の内訳では、ワンルーム4,000〜6,000円、1LDK6,000〜8,500円が中央値でした。極端な安値は繁忙期に枠が取れない・オプションが後付けで積み上がる、というリスクがあります。
自主清掃の実測時間:ワンルームで75分、1LDKで105分
自分の3物件で計時した実働(移動と洗濯を除く純粋な部屋作業)の中央値は、新宿ワンルーム25㎡が75分、大田区ワンルーム28㎡が80分、浅草1LDK 45㎡が105分でした。慣れれば短くなるかと期待しましたが、季節と汚れ具合で±30分は普通に揺れます。
初めての人は倍かかると思っておいたほうが安全です。私も1年目の平均は「表示時間×1.7」でした。動線が悪い、道具の置き場所が定まらない、シーツを敷き直す回数が増える。この3つで時間が溶ける。
時間の内訳は、水回り25分・ベッドメイキング15分・掃除機と拭き上げ20分・キッチンと備品15分・写真報告5分、といった配分。ここに移動と洗濯を足すので、実感としては1件で半日が消えます。
部屋タイプ別の作業時間の実測目安で細かく書いているので、自分の物件がどれくらいかかるか概算したい人はそちらを参照してください。
洗濯を家でやると水道光熱費が意外に効く
シーツ2枚・カバー2枚・タオル5枚を家庭用洗濯機で回すと、電気水道洗剤で1回あたり約100〜200円。乾燥機を使うともう100〜200円上乗せ。月10回で3,000〜4,000円。金額としては小さいですが、干す場所と時間の圧迫が地味に効きます。
リネンサプライを使うか自前で回すかは、稼働日数で分岐点が変わるので別記事の稼働別シミュレーションを見比べるのが早いです。
移動時間の見落としが最大の罠
私が最初の1年で一番過小評価していたのが、移動時間でした。自宅から新宿の物件まで片道45分、大田区まで片道50分、浅草まで片道40分。往復1時間半を10回で15時間。これを「本業の休憩」と自分に言い聞かせて計算から外していた時期があります。
移動中に本業のメールを返せる、と思っていたのは幻想でした。満員電車の中で疲労が溜まって、着いた頃には清掃前から集中力が半分。ここを時給1,000円で置くだけでも、月10泊で1.5万円分。損益分岐の傾きが大きく変わります。
洗濯機の寿命という隠れコスト
これは笑い話ですが、家庭用洗濯機で民泊のシーツを月20回以上回していたら、2年で洗濯機が壊れました。買い替えで7万円。1年あたり3.5万円の減価償却が乗ります。
以来、リネンサプライか業者持ち込み洗濯に切り替えました。家庭用の機械を業務用途で酷使すると寿命が縮む、というのは事後にしか気づけないコスト。
自分の物件で外注がいくらになるか、条件を入れて複数社から見積もりを取ってから判断すると失敗が減ります。1件ずつ電話して回るより早いので、比較の入口だけ使うのもありです。
外注の実額:東京都心のワンルームで4,000〜7,000円が中央値
複数の民泊清掃事業者の公開料金と、私が実際に取った見積書10社分を照らし合わせると、東京都心のワンルーム(20㎡前後)で1回4,000〜7,000円、1LDK〜2LDK(40〜60㎡)で6,000〜8,500円が中央値でした。あくまで基本料金+一般的なリネン込みの範囲で、繁忙期割増・深夜料金・特殊清掃は別枠。
安すぎる(都心ワンルームで3,000円台前半など)業者は、繁忙期に枠が回ってこない・オプションが積み上がる・引き継ぎ精度が低い、といった別コストがあとから乗ることが多い。私も2022年に1件それで失敗してます。
繁忙期割増・追加料金の相場感
GW・お盆・年末年始・桜(3月下旬〜4月上旬)は、業者によって10〜30%の繁忙期割増が入ります。私の契約先だと年末年始は+20%固定。ゴミ持ち帰り・深夜チェックアウト対応・想定外の汚損は、それぞれ1,000〜3,000円のスポット追加が一般的です。
この追加が積み上がると、繁忙期の月は基本料金の1.3倍まで膨らむことがあります。月次で見て「外注ちょっと高いな」と感じる月は、たいてい追加が乗ってる月。
時給の置き方で結論が変わる:3パターンで試算
損益分岐は「自分の時間をいくらに評価するか」で天秤が傾きます。以下、東京都最低賃金1,226円(2025年10月3日改定)を下限に、3パターンで新宿ワンルーム10泊/月の場合を比べます。
| 時給の置き方 | 自主清掃の月コスト | 外注の月コスト | 差額 |
|---|---|---|---|
| 1,226円(最低賃金) | 約41,000円 | 55,000円 | 自主が14,000円安い |
| 1,800円(本業並み) | 約56,000円 | 55,000円 | ほぼ同額 |
| 3,000円(本業残業時給相当) | 約81,000円 | 55,000円 | 外注が26,000円安い |
読み方はシンプル。「自分がその時間で本業や休息に使いたい価値」より外注費が安ければ外注、高ければ自主。私は本業のミーティング資料を作る時間が欲しいので、実質1,800〜2,500円で置いてます。
外注と自主清掃の損益分岐を3物件で試算した記事で、稼働日数別に月コストが逆転する点を数字で並べているので、自分の稼働に近いパターンを当てはめてみると早いです。
見落としがちな「機会損失」
清掃で疲れた翌日は、本業のパフォーマンスが2割落ちる感覚があります。会議で頭が回らない、判断が鈍る。これは数字にしにくいけど、兼業オーナーが自主清掃を続けると本業側で失う金額のほうが実は大きい、というのが3年やってきての実感。
法規の前提:家主不在型は住宅宿泊管理業者への委託が必要
見落とされがちですが、家主不在型で民泊を運営する場合、住宅宿泊事業法11条により住宅宿泊管理業者への管理業務委託が原則として義務付けられています。清掃はその管理業務の一部という位置づけ。国土交通省の資料に明記されています。
つまり「清掃を自分でやるか外注か」の話は、家主居住型か、届出住戸数が管理業者委託不要の条件に該当するか、あるいは自分が住宅宿泊管理業の登録を取っているか、のいずれかが前提です。ここを外して単純比較すると、そもそも違法運用になります。
私は3物件とも家主不在型なので、住宅宿泊管理業者経由で清掃を回しています。清掃を自分でやる場合も、管理業者との契約上どこまで自分で担っていいかは事前確認が必須。詳細はお住まいの自治体の民泊窓口と、契約している管理業者に必ず確認してください。
衛生基準は自主でも外注でも同じ
シーツ交換や消毒の頻度は、住宅宿泊事業法の施行規則と厚労省の衛生等管理要領を基準に判断します。自分でやろうが外注しようが基準は変わらない。シーツ交換の衛生基準の確認先を1回読んでおくと、業者に頼む場合の指示書がラクになります。
自主清掃が向いている人・外注が向いている人
私の周りのオーナー約12人を見てきて、うまく続いているパターンは以下です。断定はしませんが、傾向として。
自主清掃が回りやすい条件
- 物件が自宅から片道20分以内
- 月の稼働が5〜8泊程度に収まっている
- 本業の時間の自由度が高い(フリーランス・自営・在宅勤務中心)
- 1物件だけを運営していて拡大予定がない
- 清掃そのものが苦にならない性格
外注に切り替えたほうが楽な条件
- 月の稼働が10泊以上ある月が多い
- 本業が平日日中に固定で動けない
- 2物件以上を並行運営している
- 物件が自宅から片道30分以上離れている
- 繁忙期に「連泊のあいだの清掃」が挟まる運用をしている
副業の個人業者に頼むと安く済むケースもありますが、鍵管理・損害賠償・繁忙期の稼働で落とし穴があります。副業の個人に頼む場合の落とし穴を先に読んでから発注するのがおすすめ。
外注に切り替える前に決めておく6つのこと
外注に振ると決めても、契約前に決めておかないと後で揉める項目があります。私が3社を渡り歩いて学んだ範囲で。
- 鍵の受け渡し方法(キーボックスの暗証番号ローテーション頻度)
- 写真報告の枚数と提出時刻(当日中か翌朝までか)
- 繁忙期の枠確保方法(先着か月次予約か)
- 急なチェックアウト遅延時の追加料金の上限
- リネン破損・備品破損の補填ルール
- 契約解除の予告期間(1ヶ月前が多いが業者による)
これを口頭だけで進めると、3ヶ月後にトラブルが出ます。私は2社目で「繁忙期割増を口頭で20%と聞いていたのに、請求は30%」で揉めました。以来、契約書に単価表を添付してもらう方式に統一。
同じ理屈で、業者を切り替えるときも引き継ぎマニュアルの整備が効きます。ここは別記事に譲ります。
判断が分かれる論点:ハイブリッド運用は続けられるか
私自身がまだ答えを出せていないのが「繁忙期だけ自分で入る」ハイブリッド運用の是非です。金額だけ見れば、繁忙期割増がのる外注をスキップして自分で入るほうが月に1〜2万円浮く。ただ、繁忙期は本業も忙しい時期と重なりやすい。
私は2025年のGWに浅草の1LDKで自分が入る予定を組んだら、直前に本業の急な出張が入って崩壊しかけました。バックアップの業者を1社常時キープしておくコスト(月額固定の一部)と、ハイブリッドで浮く金額を比べたら、ほぼトントン。
ハイブリッドが成立する人の条件は、家族が動ける、または業者2社と契約している、のどちらか、というのが私の暫定結論です。ここは物件数と生活状況次第なので、自分の生活と本業のピークを重ね合わせて考えるしかない。
私が外注に切り替えた3つの決定打
金額の比較だけで判断すると踏み切れないのが、この問題の厄介なところです。私が最終的に外注に振ったのは、数字ではなく生活が壊れかけたからでした。参考までに、決め手を3つ書きます。
1. 金曜21時のチェックインで自分が入れなかった夜
2022年11月、浅草の1LDKで金曜21時チェックインが入り、直前ゲストのチェックアウトが16時。本業の会議が押して、私が現地に着いたのが18時半。清掃を終えて備品を並べたのが20時50分。到着したゲストと入れ違いになりかけて、玄関で汗だくのまま挨拶しました。星4のレビューがつきました。あれは自分の運用が悪い。
業者に任せていたら、たぶん夕方までに終わって余裕を持って迎えられた。時給換算で得か損か以前に、リスク管理として自主は無理があると思った瞬間でした。
2. 本業の残業時給で計算し直したら赤字だった
2023年の年明けに家計簿を1年ぶんまとめて、時給を本業の残業単価(当時2,800円)で置き直したら、自主清掃のほうが月3〜5万円高いという結果になりました。金銭的には黒字に見えていた運用が、機会損失を入れると赤字。ここで数字が腹落ちしました。
3. 家族の目が冷たくなった
土曜の朝に出かけて夕方に泥のように疲れて帰ってくる父親を、子どもは覚えます。妻からも「本業で疲れて、副業でさらに疲れて、家にいるのは残りかす」と真顔で言われた夜がありました。金額の話ではなく、家庭運営の話。
この3つが重なって、月10泊を超える物件から順に外注に切り替えました。今のところ後悔していない、というのが3年経った今の答えです。
外注か自主か迷ったら、まず1件だけ見積もりを取って自分の物件の実額を見るのが早いです。取ってから断ってもいい。数字を見ないまま自主で回し続けるほうがもったいない、というのが3年やってきて一番強く感じてます。
よくある質問
Q1. 自分で清掃をやる場合、住宅宿泊管理業者への委託は不要ですか?
いいえ、清掃を自分でやるかどうかと、家主不在型の管理業務委託義務は別の話です。住宅宿泊事業法11条により、家主不在型は原則として住宅宿泊管理業者への委託が必要です。清掃だけ自分で担いたい場合は、契約している管理業者との役割分担を事前に確認してください。詳細は国土交通省の資料と自治体窓口が一次情報です。
Q2. 副業の個人業者に頼むのは安全ですか?
金額は安く出やすいですが、鍵管理・損害賠償保険の加入有無・繁忙期の稼働・法人格の有無で会社委託とは違う注意点があります。私は個人業者と会社業者を両方使いましたが、繁忙期の枠確保と鍵管理の厳格さでは会社に軍配が上がります。契約前に保険の有無と鍵管理の運用ルールを必ず書面で確認してください。
Q3. 外注費は経費で落とせますか?
民泊事業の必要経費として計上できるのが一般的ですが、青色申告か白色か、副業か本業かで扱いが変わります。税務の詳細は税理士または所轄税務署の相談窓口に確認してください。私は年1回、税理士に見てもらってます。
Q4. 損益分岐の月8〜10泊は全国で通用しますか?
あくまで東京都心の外注単価と最低賃金1,226円(2025年10月3日改定)を前提にした私の3物件の数字です。地方や23区外では外注単価が下がる一方、業者の選択肢も減るため、分岐点は地域で動きます。自分の地域の見積書を最低3社取ってから計算し直すのが確実です。
Q5. 清掃を止めれば予約が来ないタイミングでは、自主のほうが得ですか?
稼働が月3〜4泊まで落ちる月は、たしかに自主のほうが金銭的には得です。ただし業者との契約が「月最低本数保証」だと、稼働が少なくても最低料金が発生する契約もあるので契約書の確認が必要。あと、久しぶりに自分で入ると勘が鈍っていて時間が倍かかる、というのは正直あります。

