下請けから直請けへ|民泊清掃で収益を上げる実務手順

民泊清掃で下請けから直請けに切り替える業者のイメージ 清掃業者の方へ

金曜の22時、会社帰りに新宿の部屋を見に寄ったら、清掃の兄ちゃんが最終便でまだ作業していた。声をかけたら「今日6件目です、これから浅草もう1件」と笑っていた。彼の元請の元請までたどると、1件3,500円で受けた案件が、彼の手取りは1,800円だと後で聞いた。

民泊清掃の下請け構造は根深い。プラットフォーム、運営代行、清掃会社、そして現場のスタッフ。間に何社挟まっているかで、同じ物件の同じ作業が倍の単価差になる。うちも3年前まではその末端側にいる業者さんに助けられていたので、下請けが悪いとは思わない。ただ、そこで消耗している人が「直請けに切り替えたい」と言うなら、発注する側からアドバイスできることはある。

この記事は、下請けで消耗している清掃業者・個人事業主に向けて書いた。都内で3物件を回している兼業オーナー(本業あり)が、発注する側から見た「直請けに切り替える具体的な手順」と「切り替えると本当に収益が上がるのか」を、2026年1月施行の取適法(旧下請法)とフリーランス新法の一次情報を踏まえて整理する。

この記事の要点

  • 民泊清掃の下請け構造では、末端の清掃者が受け取る単価は元請提示額の40〜60%まで削られるのが編集部調べで一般的(東京・ワンルーム・2〜3次下請けの場合、条件で変動)
  • 直請けに切り替えると、同じワンルームで手取りが1件3,500〜5,500円に上がる(編集部調べ・東京・2026年時点、物件と時期で変動)
  • 2026年1月施行の取適法(旧下請法の改正)で、価格転嫁の協議義務が強化され、清掃を含む役務提供委託でも下請事業者の交渉根拠が増える
  • 直請け化の最短ルートは「マッチング登録→エリア密着営業→運営代行の脱・中抜き提案」の3経路の並走。1経路単独は不安定
  • 直請けは単価が上がる代わりに、鍵管理・損害賠償・繁忙期対応の責任も全部自分で被る。売上より粗利で見ないと判断を誤る

電話とメールで一社ずつ発注元を開拓するのが辛いと感じているなら、条件を登録するだけでオーナー側から声が届く見つける君のような仕組みを一本混ぜておくと、営業の空振りが減ります。

民泊清掃の下請け構造は何層になっているか

結論から言うと、民泊清掃の商流は最短で1層、長いと4層になる。ここを図解できるようになると、自分がどの層で削られているかが一発でわかる。

私が過去に発注してきた経路を整理すると、こう分かれる。オーナー直の1層。オーナー→運営代行→清掃会社の3層。オーナー→運営代行→元請清掃会社→2次下請けの4層。うちの新宿の部屋は、最初の1年半は運営代行経由の3層構造で回していた。清掃1回7,000円払っていたが、後日現場の清掃スタッフに聞いたら、彼の会社に入っていたのは4,200円、彼の手取りは時給換算で1,500円弱だった。

4層構造がなぜ生まれるかというと、清掃会社側にも理由がある。繁忙期に自社スタッフだけで回せないから他社に振る。地理的に遠い物件は現地の業者に投げる。閑散期にスタッフの稼働を落としたくないから他社の案件を拾う。良し悪しの話ではなく、供給側の事情で構造がそう組まれている。

層ごとの取り分の実勢(編集部調べ)

下は私が過去2年で見聞きした実勢レンジ。ワンルーム1回・東京・2026年時点。物件条件と契約形態で変動する。

受注額の目安主な役割
オーナー支払い6,000〜8,000円ゲスト請求分から支出
運営代行の取り分1,000〜2,000円予約管理・鍵手配・請求
元請清掃会社4,000〜6,000円スケジューリング・品質管理
2次下請け(現場)2,000〜3,500円実際の清掃・リネン交換

この表を見て「元請清掃会社が中抜きしすぎ」と言うのは短絡的だと思っている。元請には元請の管理コストがある。ただ、末端の2次下請けが「時給換算で1,000円台前半」で回している状態は、2025年10月改定の東京都最低賃金1,226円を割る可能性がある。ここは危険水域だと感じる。

下請けから直請けに変えると本当に収益は上がるのか

結論、粗利ベースでは上がる。ただし売上ベースだけで見ると錯覚する。ここを整理しないと、切り替えたのに手取りが減ることもある。

私が知っている40代の個人業者さんは、2024年の春に運営代行経由の下請け6件/日から、直請け中心の3件/日に切り替えた。1件あたりの手取りは2,800円から5,000円に上がった。ただし、鍵の受け渡しで駅前のキーボックスまで往復する時間、オーナーとのLINE返信、繁忙期の枠管理、消耗品の立替。全部彼が被る。トータルの月商は微増、粗利は+18%、ただし労働時間は10%増えた。数字だけ見ると微妙な結果に見えるが、彼は「気持ちが違う」と言う。指名で頼まれる仕事は疲労感が違うらしい。

直請けで乗る単価と、消える工数

直請けに切り替えると乗るのは3つ。中間マージンの一部(全部ではない、オーナーもある程度取り返す)。営業経路が短くなることで生じる指名料的なプレミアム。オーナーが「他に頼めないから多少上げても継続してほしい」と思う長期契約の安定単価。

消えるのは、間に立ってくれていた元請の業務。急な予定変更の調整、鍵の管理、クレーム一次受け、月次請求書、繁忙期の枠割り。ここを自分でやれるかどうかで、直請け化の成否が決まる。うちが下請け業者から直接発注に切り替えた例では、切り替え半年後に業者側から「請求書だけ運営代行にまとめて出させてほしい、事務が回らない」と申し出があった。事務コストは無視できない。

この論点を数字で先に整理したいなら、単価をいくらで請けるべきかの考え方を先に読んでおくといい。労務費・移動費・事務費まで含めた分解の型が使える。

直請けに切り替える3つの経路(並走が前提)

結論、経路は3つある。マッチングサービスへの登録、地域密着の直接営業、既存の下請け先で「中抜き解消」を提案する。この3つを並走させないと、稼働が読めない。1経路単独に賭けると必ずどこかで空く。

経路1: マッチングサービスへの登録

民泊オーナーと清掃業者を直接つなぐマッチングは、営業コストゼロで発注元が向こうから来る仕組み。デメリットは、価格勝負に引きずられやすいこと。プロフィール文で対応時間・繁忙期の空き・写真報告の有無を書き込んでおかないと、単価の安い業者に埋もれる。

うちが見つける君で業者を探したとき、最初にクリックしたのは「平日夜18時以降のチェックアウトOK」と書いてあった1社だった。理由は単純で、うちの新宿の部屋が金曜夜チェックアウト・土曜朝チェックインの回転が多いから。そういう業者は数が少ないので、そこだけで指名理由になる。

経路2: エリア密着の直接営業

2026年時点、東京都心では清掃業者不足が続いている。特に新宿・渋谷・浅草・池袋の民泊密集エリアは、繁忙期に枠を取れないオーナーが多い。これは営業側から見ると「向こうが探している状態」。自分の稼働エリアを絞って、そのエリアのオーナーに直接届ける営業が刺さる。

具体的な営業手順は、オーナー直営業の具体的な流れにまとめてある。私が実際に受け取った提案書のうち返信した10通の共通項も分析してあるので、営業文面のたたきに使える。

経路3: 既存の下請け先で中抜き解消を提案

これは慎重に。既存の元請との関係を壊すやり方ではなく、「オーナー直取引に切り替えたら双方得します」という角度で運営代行や元請と交渉する経路。オーナー側が中抜きを認識していない場合、直接オーナーに提案するのはルール違反になることが多い。契約書の競業避止条項に引っかかる場合もある。

私自身、下請け業者から「オーナーさんに直接請求書出せませんか」と言われて驚いたことがある。既存の元請との契約に何が書いてあるかを本人が把握していなかった。この経路は契約書の確認が先。

2026年1月施行の取適法とフリーランス新法が味方になる

結論、下請け側の交渉根拠は2024〜2026年で明らかに増えた。これを知らないと交渉のカードを1枚捨てているのと同じ。

2024年11月に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、従業員を使わない個人事業主が業務委託を受ける取引について、発注者側に取引条件の書面明示、報酬の60日以内支払い、一方的な減額禁止などを課している。民泊清掃を個人で請け負う人はこの法律の保護対象になる。書面が出てこない発注元、支払いが月末締め翌々月末払い(60日超)になっている発注元は、これを根拠に是正を求められる。

2026年1月からは、下請法が名称も内容も変わって「取適法(中小受託取引適正化法)」に切り替わる。政府広報オンラインによれば、労務費・原材料費の上昇分の価格転嫁を協議しないことが禁止行為として明記される方向で、手形払いの原則禁止も進む。民泊清掃は「役務提供委託」に該当するため、資本金基準を満たす取引はこの新法の対象になる。

ただし注意点が1つ。経済産業省の説明資料では、発注者が自社利用のために委託する役務(自家利用役務)は原則対象外とされている。民泊清掃が「事業者向けの再委託」なのか「オーナーの自家利用の委託」なのかで扱いが変わる可能性がある。ここは自分の取引形態で管轄窓口に確認するのが確実。

取引条件の書面化や値上げ交渉の実務については、値上げ交渉で通る根拠と伝え方に3通のメール構成まで整理してある。新法を根拠にした交渉テンプレはそのまま流用できる。

営業経路の空振りを減らしたいなら、電話とメールを配り歩く前に、条件登録型のマッチングに1枠置いておくのが早いです。

直請けで単価を維持するために発注側が見ている項目

結論、単価が上がるかどうかは技術より「発注側の不安をどれだけ潰せるか」で決まる。発注する側から見ると、直請けに切り替えるのは怖い。中間業者がクレームや事故を吸収してくれていた安心を手放すことになる。

私が業者選定のときに実際に見ている項目は7つある。損害賠償保険(施設賠償責任保険)に入っているか。鍵の管理方法(キーボックスか、預かりか、スマートロックか)。写真報告の粒度。繁忙期・年末年始の対応可否。当日キャンセル時の料金ルール。連絡手段(LINEかメールか、返信の速さ)。廃棄物の処理方法。

このうち、下請け経験の長い業者が意外と苦手なのが「写真報告」と「連絡の速さ」だと感じている。元請が間に入ってフィルタしてくれていた業務なので、直請けに変わると急に自分でやることになる。ここが崩れると1回で切られる。

写真報告の具体的な作り方は、継続契約につながる報告フォーマットにLINEテンプレまで載せてある。直請け化と同時に、この報告の型を先に固めておくと事故率が下がる。

切り替え初月に絶対に起きる3つの詰まり

直請けに切り替えた業者さんから、切り替え初月に相談を受ける詰まりが3種類ある。事前に知っておけば、慌てずに済む。

詰まり1: 稼働の谷が2〜3週間できる

元請から切り替えると、直請け案件が立ち上がるまで2〜3週間空くのが普通。この間の売上ゼロを覚悟していないと、キャッシュが持たない。私が知っている個人業者さんは、切り替え初月の売上が前月比マイナス40%だった。3か月目で追い抜いたが、初月は本当にきついと言っていた。

詰まり2: 鍵と連絡の負担が想像の倍

下請けのとき、鍵は元請から渡されて連絡は元請経由だった。直請けに変わると、物件ごとに鍵の受け渡し方法が違い、オーナーごとに連絡ツールが違う(LINE、SMS、電話、メール、Slack、たまにMessenger)。1件増えるごとに認知コストが乗る。10件超えたあたりで頭がパンクする人が多い。

詰まり3: 繁忙期の枠割りで信用を落とす

GW・夏休み・年末年始。この3期間で1回でも「枠が取れませんでした」をやると、直請けオーナーは容赦なく次を探す。下請け時代は元請が調整してくれていた繁忙期の枠を、自分で先読みして予約管理しないといけない。ここでミスると単価が上がった意味が消える。

繁忙期の人手確保について、応援スタッフの探し方と単価は繁忙期の人手確保方法で整理してある。スポットワーク・派遣・副業層の使い分けは早めに手を打っておいたほうがいい。

下請けを続けるべき人、直請けに移るべき人

結論、全員が直請けに移るべきとは思わない。判断軸は3つある。

下請けを続けたほうがいい人。事務作業が本当に苦手な人。連絡の返信を24時間以内にする自信がない人。損害賠償が起きたときに一人で対応するのが不安な人。この3つのどれかに強く当てはまるなら、元請と単価交渉する方向に振ったほうが結果的に手取りが増える。値上げ交渉は取適法とフリーランス新法を根拠にすれば通しやすくなっている。

直請けに移ったほうがいい人。すでに月10件以上を1人で回している人(事務が回っている証拠)。特定エリアに強い(新宿・浅草・大田区など地の利がある)人。LINEとGoogleカレンダーで自己管理ができる人。損害賠償保険に既に加入済み、または加入予定の人。この条件を全部満たすなら、経路1〜3を並走で仕込む価値がある。

私自身、発注する側として「下請けから直請けに切り替わった業者と長く付き合いたい」とは限らない。安定していれば元請経由でもいい。むしろ、元請の管理品質が高ければ、そちらのほうが楽なこともある。ここは業者側のライフスタイルと発注側の要件の相性で決まる。全員の正解はない。

直請け化を検討する読者に残しておきたい論点

ここは答えを出さずに置く。読み終えた人が自分で考える余白として残しておきたい論点が1つある。

直請けで単価が上がった業者は、次に「自分が元請になる」段階が来る。人を雇うか、外注で振るか、事務員を雇うか。ここで多くの人が下請け構造の再生産に加担する。自分が末端で嫌だった中抜きを、自分が上に立った瞬間にやるかどうか。ここは技術論では決まらない。個人の倫理観の問題として残る。

私は業者さんに「自分が発注する側になったとき、末端の手取りをいくらに設定するか」を先に決めておいてほしいと伝えている。答えは人それぞれでいい。決めていないと、規模が拡大したときに気づけば同じ構造になっている。

直請けに切り替える経路の1本目として、条件登録型のマッチングを試してみるのが、一番低コストな第一歩だと思ってます。

よくある質問

Q1. 下請けから直請けに切り替えるのに、法律上の問題はありますか?

既存の元請との契約書に「競業避止義務」や「取引先への直接営業の禁止」条項があるかを先に確認してください。契約期間中の顧客直取引は契約違反になる場合があります。契約書がない、または明記されていない場合は民法上の一般原則に従いますが、信義則違反として損害賠償を求められる可能性はゼロではありません。契約書の見直しは弁護士に相談するのが確実です。

Q2. 直請けに切り替えると、税務や請求はどう変わりますか?

下請け時は元請から支払通知書と源泉徴収明細が届いていたはずですが、直請けは自分でオーナー宛に請求書を発行します。2023年10月からのインボイス制度に対応するなら、適格請求書発行事業者の登録番号を請求書に記載する必要があります。オーナー側が課税事業者の場合、登録番号がないと消費税分の値引きを求められることがあります。詳しくは国税庁のインボイス制度特設サイトで確認してください。

Q3. マッチングサービスに登録しても、いきなり案件が来るものですか?

登録直後の1〜2週間は問い合わせがゼロのこともあります。プロフィール文の作り込みで反応率がかなり変わります。稼働エリア(区・駅名まで具体的に)、対応時間帯(平日夜、早朝、繁忙期の空き)、写真報告の有無、対応可能な間取り、損害賠償保険加入の有無を書き込むと、条件が合うオーナーから声がかかりやすくなります。単価だけで比較されるとレースになるので、条件面で差別化するのがコツだと思っています。

Q4. 直請けに切り替えたら、単価はいくらに設定すればいいですか?

編集部調べで東京・ワンルーム・リネン込みで4,500〜6,500円が個人事業主の直請けレンジです。ただし、これは条件と繁忙期対応の可否で大きく振れます。労務費(東京都最低賃金1,226円×作業時間×1.3の管理費係数)、移動費(往復2時間換算)、消耗品費、事務コストの4つを積み上げて算出したうえで、市場価格と突き合わせるのが妥当だと思います。安く出しすぎると値上げがしにくいので、初回契約時の設定は慎重に。

Q5. 元請から直請けに移ることを、元請にどう伝えるべきですか?

正直、これは難しい問題です。元請との関係を残したまま直請け案件を増やしていくのが現実的なやり方で、いきなり全部切ると閑散期に逃げ場がなくなります。私が知っている業者さんは、直請け比率を段階的に30%→50%→70%と上げていって、1年かけて完全移行しました。元請には「稼働が埋まってきたので、御社案件は月◯件までにさせてください」と伝える形にしていました。関係を悪化させずに移るには、この段階移行が現実解だと感じています。

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