民泊の害虫対策は法律でどこまで求められる?定期防除の目安と業者依頼の判断

民泊の客室でベッド下や隙間を点検する害虫防除のイメージ 清掃品質・運営ノウハウ

浅草の1LDKに入ったチェックイン直後、ゲストから「壁際に黒いのが走った」というメッセージが来た。会社帰りの金曜21時、電車を降りたところで通知を見て背筋が冷えた。ゴキブリだった。翌朝の清掃業者にお願いして侵入経路の確認と粘着トラップの設置、翌週に業者防除を1回入れて、レビューは星4で済んだ。星4で済んだ、と書いたけれど、正直このときまで害虫対策を「気づいたときにやる」で済ませていた自分が甘かった、と今でも思う。

民泊の害虫対策は、住宅宿泊事業法(民泊新法)と自治体の条例、それに関連する衛生法規で、実はけっこう具体的に触れられている。「気づいたら駆除」ではなく「発生を防止するための措置」まで含めて求められる、というのがポイントだ。ただ、家庭用の一般住宅を届け出た小規模民泊に、大規模ビルと同じ頻度が課されているわけでもない。ここが混乱しやすい。

この記事では、3物件(新宿区25㎡ワンルーム/台東区45㎡1LDK/大田区28㎡ワンルーム)を兼業で回している自分の実運用と、観光庁ガイドライン・自治体条例・厚労省の建築物衛生管理基準の一次情報を突き合わせて、「法律でどこまで求められるのか」「定期防除の目安はどれくらいか」「どこから業者に頼むべきか」を整理する。

  1. この記事の要点
  2. 民泊の害虫対策は法律で何が義務になっているのか
    1. 住宅宿泊事業法5条・施行規則で求められる衛生確保措置
    2. 自治体条例で追加される「ねずみ・衛生害虫の駆除」義務
  3. ビル管理法の「6ヶ月ごと調査」は民泊に適用されるのか
    1. 小規模民泊はビル管法対象外、でも民泊新法・条例で「駆除義務」は残る
  4. 3物件オーナーの実運用|定期防除は年2回でどこまで抑えられるか
    1. 通常清掃で必ず見てもらう5つのポイント(セルフ+業者向け指示)
    2. 春と秋の業者防除、1回あたりの費用感(編集部調べ)
  5. 害虫別に見る対応レベル|ゴキブリ・ダニ・トコジラミ・ねずみ
    1. ゴキブリ|市販ベイト+年2回業者防除でほぼ抑えられる
    2. ダニ|リネン運用と換気で予防、発生疑いは業者へ
    3. トコジラミ|疑いレベルで即業者、DIYはやらない
    4. ねずみ|1階・低層階は要注意、建物側の問題も切り分け
  6. 自分でやるか業者に頼むかの判断軸|4つの分岐
    1. 軸1:虫の種類がトコジラミなら即業者、それ以外は状況次第
    2. 軸2:頻度・範囲が広がったら業者、単発なら様子見
    3. 軸3:ゲスト報告が入ったらレビュー保護のため業者記録を残す
    4. 軸4:保健所から接触があったら100%業者、記録も業者経由で
  7. 害虫対応してくれる業者を選ぶ4つのチェックポイント
    1. 1. 民泊・宿泊施設への対応実績
    2. 2. 使用薬剤の開示と安全性への配慮
    3. 3. 報告書のフォーマット(写真+所見)
    4. 4. 損害賠償保険への加入
  8. 保健所から指導が入る流れと、その前に整えておく記録
    1. 最低限残しておきたい記録3つ
  9. 読者が自分で判断する余地|「予防にどこまで金を使うか」に正解はない
  10. よくある質問
    1. Q1. 民泊で害虫が出たら、届け出や罰則の対象になりますか?
    2. Q2. 業者防除は法律で頻度が決まっていますか?
    3. Q3. トコジラミが出たら自分で対応できますか?
    4. Q4. 清掃業者と害虫防除業者は分けるべきですか?
    5. Q5. ゲストに害虫を指摘されたレビューが投稿されそうです。取り下げてもらえますか?
    6. Q6. マンション1棟の共用部で害虫が出た場合、民泊オーナーの責任はどうなりますか?
  11. あわせて読みたい

この記事の要点

  • 住宅宿泊事業法5条と施行規則は「定期的な清掃・換気」と「宿泊者の衛生確保」を義務化しており、京都府・東京都特別区など多くの自治体条例で「ねずみ・衛生害虫の駆除」が明記されている(要出典・自治体により条例文言は異なるため要確認)。
  • ビル管法(建築物衛生法)で6ヶ月に1回の生息調査が義務なのは延床3,000㎡以上の特定建築物や100室以上の宿泊施設で、家庭用住宅を届け出た小規模民泊は法的義務の対象外。ただし民泊新法・条例の「衛生害虫等の駆除」義務は残る。
  • 3物件の兼業オーナーの実運用では、通常清掃時のセルフ点検(毎回)+春と秋の年2回の業者防除でトラブルはほぼ抑えられている(編集部調べ、物件により変動)。
  • トコジラミが疑われる場合は即業者。DIYでの完全駆除は難しく、被害が広がると1室あたり数万〜十数万円級の駆除費用になる(業者見積りベース)。
  • 害虫が出た事実だけで違法にはならないが、「対策を講じていない」と保健所に判断された場合は指導・改善命令の対象になり得る。

一社ずつ電話して害虫防除まで対応できる業者を探すのが大変なら、条件を入れて清掃業者を比較できる見つける君で、防除対応可の業者にまとめて問い合わせる方が早いです。

民泊の害虫対策は法律で何が義務になっているのか

結論から言うと、住宅宿泊事業法5条とその施行規則で、届出住宅は「定期的な清掃・換気」と「宿泊者の衛生の確保」が義務化されている。害虫という単語そのものは民泊新法本体では強く前に出ていないが、条例レベルで「ねずみ・衛生害虫等の駆除」を明記している自治体が多い。京都府のように「届出住宅は、常に清潔にし、ねずみ、衛生害虫等を駆除すること」と条例で示している例もある。

ここで押さえておきたいのは、条例の文言は自治体で違うということ。東京都内でも23区・26市それぞれの上乗せ規制が入る可能性があるので、自分の届出先の条例と保健所の運用を必ず一次情報で確認する必要がある。「多くの自治体で書いてあるらしい」で済ませると、指導が入ったときに逃げ場がなくなる。

住宅宿泊事業法5条・施行規則で求められる衛生確保措置

厚生労働省令で定める措置として整理されているのは大きく5つ。一人あたり3.3㎡以上の居室床面積、定期的な清掃と換気、シーツ・カバー・タオル類の宿泊者ごとの交換、感染症発生時の保健所通報、浴槽等の宿泊者ごとの清掃だ。害虫は「定期的な清掃」と「宿泊者の衛生確保」に含めて解釈されており、ダニやトコジラミへの注意も要領で言及されている。

つまり、害虫対策単独の法律があるわけではなく、清掃義務・衛生確保義務の中に「発生させない」「発生したら駆除する」という当たり前が織り込まれている、という構造。逆に言えば、これが守れていないと5条違反と判断される余地がある。

自治体条例で追加される「ねずみ・衛生害虫の駆除」義務

民泊新法は自治体条例で上乗せができる仕組みで、衛生関連は保健所を持つ自治体が具体化している。京都府条例のように「常に清潔にし、ねずみ、衛生害虫等を駆除すること」「浴室・便所を定期的に消毒し、便所は防臭・防虫の措置を講じる」と踏み込んで書いてあるものもある。大阪市も条例と要領で衛生確保の具体を示している。

東京都心の物件を届け出るときは、区の保健所に条例と要綱を確認するのが最短。自分の場合、新宿区と大田区で細かな運用が違って戸惑ったことがある。届出時に配られる冊子は捨てずに取っておいた方がいい。害虫関連の一節が短く挟まっていることが多い。

清掃頻度そのもののルールは住宅宿泊事業法で求められる清掃頻度の最低ラインにまとめた記事があるので、清掃と害虫防除の関係を全体像で押さえたい人はそちらも合わせて読んでほしい。

ビル管理法の「6ヶ月ごと調査」は民泊に適用されるのか

「害虫は6ヶ月に1回調査が義務」という話をネット記事でよく見かける。これは建築物衛生法(通称ビル管法)の話で、特定建築物に該当する規模のビル・宿泊施設が対象。厚労省の建築物環境衛生管理基準では、ねずみ・昆虫等の発生場所・生息場所・侵入経路・被害状況について6ヶ月以内ごとに1回、統一的に調査を実施し、必要な措置を講じるとされている。食料区域や排水槽・廃棄物保管設備の周辺などは2ヶ月以内ごとに1回の点検も定められている。

ただし、ビル管法の対象は延床面積3,000㎡以上の事務所・商業施設や、100室以上の宿泊施設が中心。家庭用の一戸建てやマンションの1室を届出する家主不在型民泊は、ここには入らない。だから「6ヶ月に1回の生息調査を業者に頼まないと違法」ではない。

とはいえ、この頻度は業界のプロが安全側で決めた基準だから、参考にする価値はある。自分は結果的に春と秋の年2回、外部業者に予防防除を頼んでいて、間隔的にはビル管法の6ヶ月周期に近い運用になっている。義務ではないが、事故率は明らかに下がった。

小規模民泊はビル管法対象外、でも民泊新法・条例で「駆除義務」は残る

誤解しやすいのは「ビル管法対象外=害虫対策の義務なし」ではないという点。民泊新法5条の衛生確保義務と自治体条例の駆除義務は残る。ビル管法の頻度規定は使わないが、実質的には「発生させない・発生したら速やかに駆除する」ラインは同じだ。

ゲストがゴキブリを見た、レビューにダニに刺されたと書かれた、隣室から苦情が来た。この時点で保健所が動くと、まず「日常の清掃記録」と「発生時の対応記録」を求められる。清掃業者の写真報告や薬剤の使用履歴を残しておくと、この場面で効いてくる。清掃の写真報告で押さえておくべき撮影ポイントを業者と最初に合わせておくと、事後対応がだいぶ楽になる。

3物件オーナーの実運用|定期防除は年2回でどこまで抑えられるか

結論として、通常清掃時のセルフ点検(毎回)+春と秋の年2回の業者防除、この2段構えで、3物件のトラブル発生は年数件レベルに抑えられている。過去2年で害虫がらみの★1レビューは0件、★4に落ちた事例が2件(うち浅草の1LDKで1件、新宿のワンルームで1件)。

ここは物件の階数・築年・立地で全然違ってくる。1階と最上階では侵入リスクが違うし、飲食店の上と住居専用マンションでも違う。うちの浅草は1LDKで低層階、飲食店の裏動線に近い側にキッチンがあって、正直リスクは高い。だから浅草だけは年3回に増やしている。

通常清掃で必ず見てもらう5つのポイント(セルフ+業者向け指示)

清掃業者に毎回のチェックアウト清掃時に見てもらっているのは、シンク下の配管周りの湿気とフンの痕跡、冷蔵庫の裏側の埃と食べこぼし、ベッドの下と壁との隙間、玄関ドア下の隙間、エアコンのドレンホース周り。この5点。特に見落としがちなのがベッドの下で、髪の毛と食べかすが集まってダニ・トコジラミの温床になる。

チェックリストは業者に押し付けるのではなく、契約時に「うちはこの5点は必ず確認してもらいたい」と伝えて、写真報告に含めてもらう形にした。清掃単価は上がらなかった。時間を追加で取るというより、既に見ている箇所を意識化して撮ってもらう、という位置づけだから。

春と秋の業者防除、1回あたりの費用感(編集部調べ)

編集部(自分)が2024〜2025年に都内で見積もりを取ったベースだと、ワンルームの予防防除で1回あたり8,000〜15,000円、1LDKで12,000〜25,000円くらいが一般的な範囲。ゴキブリ・ダニ対応の一般的な薬剤散布と粘着トラップの設置、簡易な生息調査を含む金額感。継続契約にすると1回あたり2〜3割安くなるケースもある。あくまで編集部調べで、業者・時期・現地状況で大きく変動する。

年2回だと1物件あたり年間2〜5万円弱。3物件で6〜15万円。稼働1泊あたりに割ると数十円のオーダーで、レビュー1件★1を防ぐと考えれば投資対効果は悪くない、と自分は判断している。ここは物件と価格戦略で判断が分かれると思う。

対応区分実施主体頻度目安費用感(編集部調べ)
セルフ点検(清掃時に業者へ依頼)清掃業者チェックアウト清掃ごと清掃料金内(追加なし)
予防防除(薬剤・トラップ)害虫防除業者年2回(春・秋)ワンルーム8,000〜15,000円/回
スポット駆除(発生時)害虫防除業者都度15,000〜50,000円/回
トコジラミ本格駆除専門業者都度1室3〜15万円級
2024〜2025年に都内で編集部が受けた見積もりベース。物件・業者・時期で変動。

この見積もり比較のときに感じたのが、繁忙期は害虫防除業者も枠が埋まりやすいこと。清掃業者と同じで、GW前・お盆前・年末前に一斉予約が入って、予約2〜3週間待ちになることがある。繁忙期の清掃料金と枠取りの話と同じで、季節ものの手配は前倒しが基本。

害虫防除まで対応してくれる業者を、清掃業者と別々に探すと面倒なので、条件を絞って一気に問い合わせできる仕組みを使うと時短になります。無料で相場感も取れるので、まずは複数社に投げてみるのが早いです。

害虫別に見る対応レベル|ゴキブリ・ダニ・トコジラミ・ねずみ

「害虫」でひとくくりにすると判断が鈍る。虫の種類でリスクの階級が違う。都内3物件を回してきた実感だと、この順で警戒度が上がる。ゴキブリ、ダニ、ねずみ、トコジラミ。特にトコジラミは別格で、疑いが少しでもあれば自分は迷わず業者一択にしている。

ゴキブリ|市販ベイト+年2回業者防除でほぼ抑えられる

ゴキブリは民泊で一番遭遇率が高い。都心の集合住宅で完全に0にはできない。実際、うちの3物件でも過去2年で目撃報告が計3件あった。ただ、対応レベルはそこまで重くない。市販のベイト剤(毒餌)を各物件でシンク下・冷蔵庫裏・玄関脇の3箇所に置き、業者防除を半年ごとに入れる。この運用で新規発生の報告はほぼ止まった。

発生時の対応で大事なのは、ゲストに謝罪してから清掃業者に写真付きで報告してもらい、翌週までに業者防除を1回入れて記録を残すこと。この記録がAirbnbやAirCoverの補償申請、保健所からの問い合わせに効いてくる。

ダニ|リネン運用と換気で予防、発生疑いは業者へ

ダニはレビューに直で刺さる。「朝起きたら足首に赤い斑点が」というメッセージが1回でも来ると、その物件は当分ヒヤヒヤする。予防は基本、シーツ・枕カバーの宿泊者ごと交換と、マットレスプロテクターの使用、月1回の高温スチーム。うちはリネンサプライと自前洗濯の比較を経てレンタルに切り替えた口だが、リネン運用は害虫予防の側面からもレンタル寄りに倒れる、と思ってる。

「刺された」報告が入ったら、即業者。ダニかトコジラミかは素人の目視では判別しづらい。プロに来てもらってライトトラップと生息調査で確定させないと、間違った薬剤で余計に広がる。

トコジラミ|疑いレベルで即業者、DIYはやらない

2023年秋以降、都内のインバウンド民泊でトコジラミ相談が増えたという話を、複数の同業オーナーから聞いた。厚労省や東京都の各保健所も注意喚起を出している。海外からの旅行客が荷物やスーツケースに付着させて持ち込むケースが典型で、民泊はホテルよりリスク管理が難しい。

トコジラミの厄介さは、市販薬剤に耐性を持った個体が広がっていること、卵は薬剤が効きにくいこと、ベッドフレームの木部やコンセントの隙間に潜むので目視では見つけづらいこと。DIYでやると必ず取りこぼす。取りこぼすと隣室に広がる。マンション1棟トラブルになる。1室3〜15万円級の費用がかかっても、疑いレベルで即業者に依頼するのが唯一の正解だと自分は思ってる。

ねずみ|1階・低層階は要注意、建物側の問題も切り分け

ねずみは高層階の物件だと遭遇率は低い。うちの新宿ワンルームは中層階だが、周辺で解体工事があったタイミングで排水管から侵入されかかった。工事は自分の物件だけの問題では終わらないので、管理組合や大家(うちは賃貸で運営している物件がある)にも早めに共有した。侵入経路の封鎖は建物構造の話にもなるので、単独の民泊オーナーだけでは完結しない場面がある。

自分でやるか業者に頼むかの判断軸|4つの分岐

「予防なら自分、駆除は業者」が原則。ただ、その原則の中でも判断がブレるので、自分は4つの軸で決めている。虫の種類、頻度、範囲、そしてゲストからの報告有無。

軸1:虫の種類がトコジラミなら即業者、それ以外は状況次第

トコジラミは0か100か。疑いだけで業者。ダニも「刺された」報告が入ったら業者。ゴキブリは単発なら市販ベイトで様子見、複数回目撃なら業者。ねずみは目視・フン確認された時点で業者。この基準を自分の中で決めておくと、金曜21時の緊急連絡でも判断がぶれない。

軸2:頻度・範囲が広がったら業者、単発なら様子見

1ヶ月以内に2回目の目撃報告、あるいは複数の部屋(同じ物件内で寝室とキッチンの両方など)で発生。この時点で「単発の偶発」ではなく生息の可能性が高いので業者。単発の1匹だけなら、清掃業者にセルフ点検を強化してもらって2週間様子を見る、で足りる。

軸3:ゲスト報告が入ったらレビュー保護のため業者記録を残す

これは法律の話ではなく、事後対応の話。ゲスト報告が入った以上、こちらが「対応した証拠」を残さないと、Airbnbのカスタマーサービスに介入されたときに不利になる。業者に来てもらって領収書と報告書を保管しておくと、レビュー交渉やAirCoverの返金交渉で使える。「自分で殺虫剤撒いた」ではエビデンスにならない。

軸4:保健所から接触があったら100%業者、記録も業者経由で

近隣からの苦情経由で保健所から連絡が来た場合は、迷わず業者。自分で対応すると、報告書がなく行政指導が入る可能性がある。清掃外注の全体ガイドでも触れているが、業者を挟むことで書類・記録の面でも守られる部分は大きい。

害虫対応してくれる業者を選ぶ4つのチェックポイント

清掃業者と害虫防除業者は別の業種で、対応範囲も価格帯も違う。清掃業者に「ついでに害虫も」と頼むと、簡易的な粘着トラップ設置くらいで薬剤散布や生息調査までは含まれないことが多い。まずここを分けて考える。

1. 民泊・宿泊施設への対応実績

飲食店向けの防除業者と、民泊・ホテル向けの防除業者では、使う薬剤と作業時間帯の柔軟性が違う。民泊はチェックアウト後の限られた枠で入ってもらう必要があるので、平日日中しか動かない業者だと使いづらい。土日・夕方対応の有無を最初に確認する。

2. 使用薬剤の開示と安全性への配慮

建築物衛生法系の基準では、防除に使う薬剤は医薬品・医薬部外品として承認されたものに限る、と定められている。民泊がこの法律の対象でなくても、宿泊者に使う空間で使う薬剤としての基準は同じで良い。「何をどれくらい使うか」を書面で出してくれる業者を選ぶ。次のゲストへの残留や、匂いのリスクにも関わる。

3. 報告書のフォーマット(写真+所見)

作業前・作業後の写真、生息確認された箇所、施工内容、次回推奨時期。この4点が入った報告書を毎回もらえる業者だと、保健所対応・Airbnb対応の両方で心強い。逆に「完了しました」の一言LINEしか来ない業者は、料金が安くても後々困る。

4. 損害賠償保険への加入

薬剤散布中に家具・家電を破損する、宿泊者の私物に薬剤がかかる、などの事故対応。防除業者側で賠償保険に入っているかは契約前に必ず確認しておきたい。契約書の条項は清掃業者との契約書で確認すべき損害賠償条項と同じ考え方で読める。

保健所から指導が入る流れと、その前に整えておく記録

害虫が出た事実だけで違法にはならない。都心のマンションで害虫を完全に0にすることは不可能だから、これは保健所も理解している。問題になるのは「対策を講じていない」と判断されたとき。民泊新法5条の衛生確保義務は「必要な措置を講じる」ことなので、講じていなければ違反、講じていれば結果としてゼロでなくてもセーフ、が基本線。

だから記録が全て。保健所から接触があったときに提示できるものを、日常の中で残しておく。ここは面倒だけどサボると詰む。

最低限残しておきたい記録3つ

  • 清掃業者からの完了報告(写真付き・宿泊者ごと)を最低1年分保存
  • 予防防除業者の作業報告書と領収書を過去2〜3年分保存
  • ゲストからの害虫関連メッセージと、それに対する対応履歴(Airbnb内メッセージのスクショで可)

この3つがあれば、保健所からの指導は指導止まりで済むことが多い。改善命令や業務停止まで行くのは、記録が0で「何もしていない」と判断されたケース、というのが実務の実感。

読者が自分で判断する余地|「予防にどこまで金を使うか」に正解はない

ここまで「年2回の予防防除」を推奨してきたけれど、これが全物件に必要かというと、正直そこまで断言できない。築浅の中〜高層マンションで、周辺に飲食店がなく、稼働も月10日程度、みたいな条件なら、セルフ点検+発生時スポット対応で十分回る物件も実際ある。同業オーナーで「予防は入れず、出たら都度」で回している人もいる。

逆に、1階に飲食店が入っている築古マンション、繁忙期は月25日稼働、みたいな物件だと、年2回では足りず年4回入れているオーナーもいる。要は、リスク係数×レビュー1件下がるダメージ×予防費用、で計算する話で、答えは物件ごとに違う。自分の3物件も別々の頻度になっている。ここは判断の余地を残しておきたい。

害虫だけでなく、清掃全体を業者に任せられる仕組みを作っておくと、こういう判断も業者と相談しながら決められて楽になります。まずは自分の物件条件を伝えて、無料で複数社の意見を聞くところから始めるのが早いです。

よくある質問

Q1. 民泊で害虫が出たら、届け出や罰則の対象になりますか?

害虫が出た事実だけで直ちに罰則対象になるわけではありません。ただし、住宅宿泊事業法5条の衛生確保義務や自治体条例の駆除義務に基づき、「対策を講じていない」と判断された場合は保健所からの指導・改善命令の対象になり得ます。清掃記録・防除記録を残しておくことが、実務上いちばんの防御になります。詳細は届出先の自治体・保健所の一次情報を必ず確認してください。

Q2. 業者防除は法律で頻度が決まっていますか?

建築物衛生法(ビル管法)では、対象となる特定建築物(延床3,000㎡以上や100室以上の宿泊施設など)に6ヶ月以内ごとに1回の生息調査が義務付けられています。家庭用住宅を届出した小規模民泊はこの法律の対象外ですが、民泊新法・条例の「衛生害虫等の駆除」義務は残るため、実務では春・秋の年2回を目安に予防防除を入れているオーナーが多いです。頻度に厳格なルールはないので、物件条件で判断してください。

Q3. トコジラミが出たら自分で対応できますか?

疑いレベルで即業者、が現実的な結論です。トコジラミは市販薬剤に耐性を持った個体が広がっているとされ、卵にも薬剤が効きにくく、ベッドフレームの木部やコンセント裏に潜むためDIYでは取りこぼしやすいです。取りこぼすと隣室・隣戸に拡散するリスクがあります。1室あたり3〜15万円級の費用がかかっても、被害が広がる前に専門業者に依頼するほうが結果的に安く済むケースが多いです。

Q4. 清掃業者と害虫防除業者は分けるべきですか?

役割は分けたほうがいいです。清掃業者のチェックアウト清掃時に「セルフ点検+粘着トラップ設置」までは頼めることが多いですが、薬剤散布や生息調査、トコジラミなど本格対応は害虫防除の専門業者の領域です。清掃業者と防除業者を別に手配するのは手間なので、両方に対応できる業者や、両者を紹介してくれるマッチングサイトを使うと運用が楽になります。

Q5. ゲストに害虫を指摘されたレビューが投稿されそうです。取り下げてもらえますか?

Airbnbのレビューポリシー上、事実に基づく指摘であれば取り下げは基本難しいです。ただし、対応の履歴(謝罪・防除業者手配・返金対応など)が残っていれば、レビュー本文への返信で「その後の対応」を提示することで、ホスト側の印象マイナスをある程度抑えられます。害虫関連は事後対応の記録が最重要で、その意味でも業者経由の防除記録は投資対効果が高いです。

Q6. マンション1棟の共用部で害虫が出た場合、民泊オーナーの責任はどうなりますか?

共用部の管理は基本的に管理組合・建物オーナーの責任で、専有部(各住戸内)の管理は住戸オーナー・賃借人の責任という切り分けが一般的です。ただ、民泊で使っている住戸から共用部に害虫を広げた場合は、民泊オーナー側の責任を問われる余地があります。共用部の異常に気づいたら早めに管理会社に共有し、専有部で発生した場合は自分の側で速やかに防除する、という両輪の対応が現実解です。

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