日曜の21時、浅草の1LDKの清掃業者から写真が上がってきた。ベッドの真ん中に、直径10センチくらいの茶色いシミ。ワインかコーヒーか、たぶん両方混ざったやつ。リネンはレンタル会社から借りたシーツで、翌週の請求書には「汚損交換1枚1,800円」と1行足されて戻ってきた。
民泊を3件回してると、シミや汚れは想像より頻繁に起きる。私の体感で月1〜2回。困るのは、レンタルなのか自前運用なのかで、誰が誰にいくら払うのかがまったく違うことだ。AirCoverでゲストに請求できる線と、こっちが黙って飲むしかない線の見極めも、最初の1年はぐちゃぐちゃだった。
この記事は、都内でワンルーム2件と1LDK1件を運営する兼業オーナーの実務ログ。レンタル契約の弁償ルール、自前運用でシミが出た時の判断、AirCoverの請求手順、保健所目線の衛生基準まで、私が2年で踏んだ順に整理する。売り込みはしないので、読み終わって「これで動ける」と思ってもらえたらそれでいい。
この記事の要点
- 民泊のリネンにシミが付いた時の弁償ルールは、レンタル契約なら「汚損時の交換料金(編集部調べで1枚1,000〜3,000円が実勢)」、自前運用なら「シーツの実費+自分の労働時間」で計算する
- AirCoverはゲスト起因のリネン損害を補償対象に含めるが、請求は原則14日以内・写真と領収書必須。時系列で証拠を残さないと通らない
- 「洗えば落ちる汚れ」と「交換扱いの汚損」の線引きは業者ごとに違うため、契約書の汚損条項を発注前に必ず読む
- 住宅宿泊事業法では宿泊者が入れ替わるごとの寝具リネンの交換が求められており、シミ付きを次のゲストに出す運用は法令面でもアウト
- 月10泊を超えると自前運用の労働時間が回らなくなるので、稼働日数で切り替え判断をする
シミや汚損のたびに一社ずつ電話して料金を確認するのが辛くなったら、条件を入れるだけで清掃・リネン業者を比較できる仕組みを一度覗いておくと選択肢が広がります。
民泊のリネンにシミが付いた瞬間、最初にやること
シミを見つけた最初の30分で、後から取り返せるかが決まる。私の場合、清掃業者からの写真報告で気づくパターンが8割、自分が現地確認で気づくパターンが2割。順序を間違えると、レンタル会社にもAirCoverにも通らなくなる。
最初にやることは3つだけ。撮影、業者への連絡、そして「洗って落とすか、交換に回すか」の判断保留。この保留が地味に大事で、慌てて洗ってしまうと汚損の証拠が消える。
撮影は5枚、必ず引きと寄りをセットで
シミの写真は5枚撮る。ベッド全景、シミの寄り(10センチ以内)、シミに定規かコイン500円玉を並べたスケール比較、シーツの品番タグ、部屋の照明を消した状態でのフラッシュあり。この5枚は後でAirCoverでもレンタル会社でも同じ束を使える。
新宿のワンルームで最初にやらかしたのは、寄りだけ撮って引きを撮らなかった時。レンタル会社から「その部屋のシーツと特定できない」と突き返された。以来、必ず品番タグと部屋全景をセットで撮る。
洗う前に業者に一報する
レンタル契約の場合、汚損扱いになる汚れを回収前に洗ってしまうと、交換料金の判定が業者側の裁量に丸投げになる。私は現状のまま袋詰めして、翌日の回収便に「汚損確認願います」のメモを付けて出すようにしている。
レンタル契約の弁償ルールを契約書のどこで確認するか
レンタル契約の弁償ルールは、契約書の「汚損時の取扱い」または「損害賠償」の項目に書いてある。ここを発注前に読まずに契約すると、後で「あれ、こんな金額取られるの?」となる。
私が3社から見積もりを取った時、汚損交換料金は1枚1,000円〜3,000円の幅があった(編集部調べ、東京、2025年時点、シングルシーツで比較)。同じシーツでも会社によって倍以上違う。
見るべきは4項目
契約書で見るのは、汚損時の交換単価、判定基準(誰がどう決めるか)、破損時の弁償額、そして紛失時の扱い。この4項目を数字で書いていない契約書は避ける。「協議のうえ決定」とだけ書いてある業者は、繁忙期に揉める。
| 項目 | 編集部調べの実勢レンジ | 確認ポイント |
|---|---|---|
| シーツ汚損交換 | 1枚1,000〜3,000円 | シングル・ダブルで単価が違うか |
| 枕カバー汚損交換 | 1枚300〜800円 | 血液・ファンデ跡は交換扱いになりやすい |
| タオル汚損交換 | 1枚500〜1,500円 | フェイス・バス・ハンドで別単価 |
| 破損(焦げ穴等) | 1枚2,000〜5,000円 | タバコ焦げは交換ではなく実費弁償 |
| 紛失 | 1枚2,000〜5,000円 | 回収時カウントで確定 |
この表は私が2024年〜2025年に東京都内3社から取った見積書と契約書を並べて出したもの。地域や業者で変動するので、あくまで目安として使ってほしい。
「洗えば落ちる」の線引きは業者次第
同じ茶色のシミでも、A社は「業務用漂白で落ちる範囲」で普通の洗濯料金だけ、B社は「シミ跡が残る可能性が高いので汚損扱い」で交換料金を請求してきた。判定の主体が業者側にある以上、こっちで反論しても通らない。
契約書に「汚損の判定は当社が行う」と書いてある会社は、値段が安くても月末の請求が読めない。私は今、判定基準を写真つきで社内マニュアル化してある業者だけと契約している。
契約書のどこを読むかは以前まとめた配送頻度・シミ交換・最低ロットで見るリネン業者の選び方で3項目に絞って書いた。汚損条項の読み方はそちらと合わせて確認するとわかりやすい。
自前運用でシミが出た時の実費計算
自前運用は「シーツ本体の実費+洗剤代+自分の労働時間」で損得を出す。レンタルの汚損料金と比較する時、ここを労働時間ゼロで計算するとレンタルより自前が有利に見えてしまう。実際は違う。
私が使っている中価格帯のシングルシーツは1枚1,800円くらい。ワインのシミ1枚をお湯洗い+酸素系漂白剤つけ置きで復活させた実測時間は、つけ置き含めて2時間半。時給を本業ベースで見ると自分の労働だけで4,000円分になる。
シミの種類別、復活率の実感値
これは私の3物件・2年分のログからざっくり出した数字。医学的な根拠のある話ではなく、あくまでうちの運用でどうだったかの体感。
- コーヒー・紅茶:お湯洗いでほぼ落ちる。復活率9割
- 赤ワイン:発見から24時間以内なら8割、48時間超で3割
- 血液:40度以下の水+酸素系漂白剤で7割。熱湯はNG(タンパク質が固着する)
- ファンデーション:食器用洗剤でつまみ洗いしてから通常洗濯で6割
- ボールペン・油性ペン:ほぼ落ちない。交換前提
血液のシミは処理を間違えると固着する。厚労省の感染症対策の考え方に沿うなら、量が多い場合はゲストの体調確認とセットで感染症疑いのゲスト後の清掃対応の手順を先に踏む。復活を狙う前に安全が先。
自前とレンタル、シミ1件あたりのコスト比較
| ケース | 自前運用 | レンタル契約 |
|---|---|---|
| コーヒーのシミ(落ちる) | 洗剤代+労働1.5時間 | 通常洗濯料金のみ |
| 赤ワインのシミ(落ちない) | シーツ実費1,800円+労働2.5時間 | 交換料金1,800円前後 |
| 血液(大量・落ちない) | シーツ実費+廃棄コスト | 交換料金+衛生対応の追加 |
| タバコ焦げ穴 | シーツ実費(即廃棄) | 破損弁償3,000円前後 |
落ちるシミは自前が有利、落ちないシミは金額だけならほぼ互角、大量の血液や焦げ穴は自前だと廃棄までこっちで抱えることになるのでレンタルの方が精神的に楽。
シミや汚損の請求ルールを1社ずつ比較するのが疲れてきたなら、条件を入れるだけで契約書の主要項目まで確認できるマッチングを一度使ってみるのが早いです。
AirCoverでゲストに請求する時の流れと落とし穴
Airbnbのホスト向けAirCoverは、ゲストが引き起こしたホストの財物損害を補償対象に含める。リネンのシミも対象に入るが、私が最初の年に3件申請して通ったのは1件だけだった。落とし穴が3つある。
落とし穴1つ目は期限。Airbnbのヘルプでは、次のゲストのチェックイン前、または損害発生から14日以内のどちらか早い方までに申請するのが原則。1週間過ぎてから「そういえば」と申請したケースは全部通らなかった。
2つ目は証拠の粒度。写真だけでは足りない。シーツの購入時の領収書(自前運用の場合)、レンタル会社からの汚損料金請求書(レンタルの場合)、清掃業者からの現場写真報告、この3点セットで初めて通る印象がある。
3つ目はゲストとの事前やり取り。AirCoverの申請前にゲストに損害を伝え、支払い依頼をしてから、拒否・無視された場合にAirbnbが介入する流れ。いきなりAirbnbに投げても、ゲスト連絡のスクショを求められて戻される。
私が通った1件、通らなかった2件の差
通った1件は、大田区のワンルームで赤ワインのシミが3枚(シングルシーツ2枚と枕カバー1枚)出て、レンタル会社からの汚損料金請求書5,400円がそのまま補償された。写真は7枚、ゲスト連絡は当日夜、Airbnbへの申請は3日後。
通らなかった2件はどちらも「発見から申請まで10日以上経っていた」「ゲスト連絡のスクショが残っていなかった」のどちらかに引っかかった。制度を責めるより、こっちの動きが遅かっただけの話。
住宅宿泊事業法と衛生基準から見たシミ付きリネンの扱い
シミの残ったシーツをそのまま次のゲストに出す運用は、感覚だけでなく法令面でもアウト。住宅宿泊事業法では宿泊者が入れ替わるごとの寝具の交換・清潔管理が求められている。
住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)や施行規則では、寝具のシーツなど人が接触するものは、宿泊者が入れ替わるごとに、洗濯したものと交換すること、と定めている。旅館業の衛生等管理要領も基本的な考え方は同じ。
これは「シミがあるかどうか」ではなく「交換したかどうか」の話で、法令の主眼はそこにある。ただし現場感覚として、目に見えるシミが残ったシーツを出せば、レビューでの低評価に直結する。清掃品質がレビュー星を落とす原因で書いた通り、清潔さは減点方式で効いてくる。
保健所の立入りで見られるのは記録
私は2年目に一度、新宿の物件で保健所の立入りを受けた。見られたのは実物のシーツというより、リネン交換の記録と洗濯業者の契約書だった。シミが出た時にどう処理したかを台帳で残しているかを聞かれた。
以来、汚損が出た日は物件名・日付・シミの種類・処理(廃棄・交換・洗濯)を1行ずつメモしている。3行あれば十分。これがあるだけで、立入り時の空気が全く違う。
記録の様式は決まっていない。エクセルでもLINEのメモでも紙のノートでもいい。私はGoogleスプレッドシートに1シート作って、物件別に月ごとの汚損ログを付けている。半年に一度眺めると、どの物件でどの季節にどんなシミが多いかが見えてきて、繁忙期の備蓄設計に反映できる。
寝具の交換頻度は一次情報で確認する
寝具の衛生基準や交換頻度の具体的な運用は、自治体や施設形態で変わる部分がある。私は年に一度、東京都の民泊窓口と、物件所在地の保健所の情報を突き合わせて更新している。詳しい整理は住宅宿泊事業法と旅館業衛生等管理要領で定めるリネン交換の考え方にまとめた。
レンタルと自前、シミが出る前提でどう選ぶか
シミが出るのは避けられない前提で運用を組むなら、月間の稼働日数と汚損リスクの高い物件かどうかで切り分ける。私は3物件のうち浅草の1LDK(家族連れ多め)をレンタル、新宿・大田区のワンルーム(1人・カップル多め)を自前にしている。
家族連れが多い物件は、食べこぼしとファンデーション跡の頻度が体感で2倍。自前で回すと洗濯の労働時間が読めなくなる。逆に稼働が月10泊未満のワンルームは、汚損頻度自体が低いので自前でシーツ寿命まで回した方が安い。
切替の目安
- 月稼働15泊超・家族連れ客層:レンタル優位(労働時間が確保できない)
- 月稼働10泊未満・1人客層:自前優位(実費で足りる)
- 月稼働10〜15泊:どちらでも成立(好みと保管スペースで決める)
この分岐は月間稼働日数別のシミュレーションで細かく数字を出したので、自分の物件の稼働に当てはめて見てもらうと早い。
繁忙期は判断が変わる
GW・お盆・年末年始は稼働が跳ねる分、シミの絶対数も増える。私は繁忙期の3週間だけレンタルに寄せて、閑散期は自前に戻す運用を試している。切替の手数料はかかるけど、繁忙期の夜中に洗濯機の前で立ち尽くすよりは安い。
2024年のGWは、浅草の1LDKで7泊連続のファミリー予約が入った。3日目にお子さんがぶどうジュースを枕元でこぼして、シーツ・枕カバー・カバー類が同時に汚損。自前で回していたら、翌朝までに洗濯を回しきれずチェックアウトに間に合わなかった。レンタルに切り替えていた分、当日夜に緊急便で新品を持ってきてもらえた。
この経験があってから、繁忙期は「保険としてのレンタル」に寄せる考え方を持てるようになった。金額だけ見るとレンタルは高いけど、機会損失を1件防ぐ意味では割に合っている、と今は感じている。
シミが出た時にやってはいけない4つのこと
やってしまいがちで、後で自分の首を絞める行動を4つだけ挙げる。全部、私が過去にやらかしてから覚えた。
熱湯で洗う
血液や卵など、タンパク質系のシミに熱湯を使うと固着する。40度以下、または水で予洗い。これは家庭科の教科書レベルだけど、深夜に焦ってると忘れる。
塩素系漂白剤を色物に使う
白いシーツはいいけど、色物・柄物のリネンやタオルに塩素系を使うと脱色する。汚損を消そうとして脱色が広がって、結局全交換になったのが最初の1年の失敗。
レンタル業者に無断で漂白する
レンタル契約のリネンをオーナー側で漂白処理して、繊維が痛んだ場合の責任がグレー。契約書に「オーナーによる自己処理を禁じる」と明記している業者もいる。回収前に自分でやる前に契約書の確認を。
次のゲストに事情を説明せず、別部屋を提案する
同日ターンでシーツが足りず、別の物件に振り替えたことが一度ある。ゲストに「清掃事情で部屋変更」とだけ伝えて、詳細を出さなかった。後でレビューで「不透明な対応だった」と書かれた。同日ターンで清掃が間に合わない時の対処と同じで、事情は簡潔でも先に伝える方が結果的に評価が落ちない。
それでも判断が分かれる、私が答えを持てていない論点
ここまで整理してきたけど、2年運用しても答えが出ていない話が1つある。「シミの費用をゲストに全部請求するか、こっちで飲むか」の線引き。
Airbnbのレビュー文化を考えると、5,400円のシミ代を請求してレビュー星を1個落とされる方が、機会損失として大きい場合がある。特に稼働率の高い物件では、レビュー1個の重みが数万円分になる。逆に泣き寝入りを続けると、こっちの精神と経営が持たない。
私は今、1万円以下は請求しない、1万円超は必ず請求する、という自分ルールで動いている。これが正解かどうかは自信がない。他のオーナーがどうしているか、判断軸を分けている理由まで含めて知りたい論点として置いておく。
もう1つ答えを持てていないのが、清掃業者に「シミ処理まで含めていくらで請けてもらうか」の値付け。時間単価で乗せると請求が読めなくなり、月額固定にすると業者側の負担が重すぎて長続きしない。ここは業者との関係性と、うちの物件の汚損頻度で毎年見直している。正解を持っている方が居たら、素直に教えてほしい。
シミや弁償の話を毎回自分だけで判断していると疲れます。清掃・リネン業者の候補を持っておくと、こういう時に相談できる相手が増えるので、選択肢だけでも作っておくと動きやすくなります。
よくある質問
Q1. シミが付いたら必ずレンタル会社に連絡すべきですか
契約書に「汚損時は事前申告」と書いてある会社なら必ず連絡が必要です。書いていない場合も、回収便に「汚損確認願います」のメモを付けて出すと、後の請求で揉めにくくなります。私は書いていない業者でも念のため連絡しています。
Q2. 自前運用のシーツで、シミが落ちなかった場合の処分方法は
燃えるゴミで出せます(自治体により異なるので、お住まいの区の分別ルールを要確認)。民泊のゴミは事業系扱いのため、生活ゴミとして出すのは避けてください。事業系一般廃棄物として処理業者に回すのが原則です。
Q3. AirCoverの請求はレンタルと自前で違いますか
補償の考え方は同じですが、必要書類が違います。レンタルは「業者からの汚損料金請求書」、自前は「シーツの購入領収書」が金額の根拠になります。どちらの場合も、写真とゲスト連絡のスクショは必須です。詳細な申請の可否・上限額はAirbnbのヘルプセンターで最新条件を確認してください。
Q4. 清掃業者にリネン管理まで任せる場合、シミの弁償はどうなりますか
清掃業者がリネン込みで請け負っているケースだと、シミ交換料金がパック料金に含まれることも、別建て請求になることもあります。契約前に「汚損時は誰がいくら払うのか」を必ず確認してください。曖昧なまま契約すると繁忙期に揉めます。
Q5. シミが出た記録は、どのくらいの期間保管すべきですか
住宅宿泊事業法では宿泊者名簿の保管は3年間と定められています。シミ記録そのものに法定保管期間はありませんが、私は同じ3年で揃えて保管しています。保健所の立入り時に「衛生管理の記録」として提示できます。詳細な運用はレンタル・自前それぞれの弁償ルールと併せて確認するのがおすすめです。

