民泊清掃の単価を上げたい業者へ|値上げ交渉で通る根拠と伝え方

電卓と見積書を並べて値上げ交渉の資料を作る清掃業者の手元 清掃業者の方へ

清掃業者さんから「単価を上げたい」と相談されたのは、この夏の暑い日でした。新宿のワンルームを回してくれている業者さんが、リネン込みで1回5,500円で3年間据え置き、正直きついという話でした。私は3物件を兼業で回しているオーナーで、発注する側です。それでも「この単価はもう厳しい」という言葉に、無視できない重みを感じました。

2025年10月3日から東京都の最低賃金は時給1,226円に上がりました。2024年からの上げ幅は63円。清掃1件に90分かかるとして、人件費だけで1,839円。ここに移動・洗剤・洗濯・保険・利益が乗るのに、単価5,500円のままなら業者さんの手取りは削られていく一方です。私がオーナー側から見ても、これは「値上げ交渉して当然」だと思ってます。

この記事は、清掃業者さんに向けて、私という発注側のオーナーが「こう伝えられたら通す」「この根拠なら反論しづらい」と感じる値上げ交渉の型を書いています。同じ立場のオーナー相手に、感情論ではなく数字と法律で交渉するための地図です。

  1. この記事の要点
  2. 値上げ交渉が「当然の権利」になった2024〜2026年の法制度変化
    1. 「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を根拠にする
    2. 最低賃金の実額を計算に入れる
  3. 値上げ交渉で通る根拠の4点セット
    1. 1. 相場データ(他社より高くない証明)
    2. 2. 自社コストの内訳(値上げ額の妥当性)
    3. 3. 一次情報の引用(法令・指針)
    4. 4. 段階的な提案(着地点を用意する)
  4. 値上げ交渉の伝え方|私が「通す」と決めた3通のメール
    1. 第1通(予告):値上げの意向と背景をやわらかく共有
    2. 第2通(根拠共有):数字と一次情報を先に渡す
    3. 第3通(協議依頼):金額と着地案を提示
  5. オーナーが「値上げを断りたくなる」5つの言い方(避ける)
  6. 単価アップの現実的な着地点|値上げ以外に交渉できる5つの条件
    1. 作業範囲を減らすカードも持つ
  7. 値上げが決裂したときの実務対応
    1. 解約予告は書面で30日前が原則
    2. 相場感を持って交渉テーブルに戻る
    3. 相談窓口を知っておく
  8. オーナー側の本音|値上げを飲んだケース・断ったケース
  9. 値上げ交渉のチェックリスト(保存版)
  10. 読者に残しておきたい論点|「単価を上げる」より前にできること
  11. よくある質問
    1. Q1. 値上げを打診するタイミングはいつがベストですか?
    2. Q2. 何%くらいの値上げが妥当ですか?
    3. Q3. 値上げを断られたら契約を切ってもいいですか?
    4. Q4. 発注者に「他社はもっと安い」と言われたときの返し方は?
    5. Q5. フリーランス新法や取適法は、法人化している清掃業者にも適用されますか?
    6. Q6. 見つける君のようなマッチングに登録すると、単価は上がりますか?
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この記事の要点

  • 東京都の最低賃金は2025年10月3日から時間額1,226円(前年比+63円)。清掃1件90分なら人件費だけで約1,839円が下限になり、単価据え置きは実質値下げに等しい。
  • 2024年11月施行のフリーランス新法(特定受託事業者取引適正化法)と2026年1月施行の取適法により、発注側の一方的な単価据え置きや十分な協議なしの価格決定は「買いたたき」として問題になり得る。業者側から交渉を持ちかけること自体が正当な行動。
  • 2024年2月に内閣官房・公正取引委員会が公表した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」では、労務費上昇分は受注者から要請があれば発注者は協議に応じることが求められている。この指針を根拠に交渉できる。
  • 通る値上げ交渉には「相場データ・自社コストの内訳・最低賃金や指針の一次情報・段階的な提案」の4点セットが要る。感情論と一括値上げは通らない。
  • 断られたときの代替提案(オプション有償化・繁忙期割増・最低ロット設定・作業範囲の縮小)まで用意しておくと、交渉の着地点が広がる。

私自身は発注する側ですが、いい業者さんに長く回してもらう方が結果的に安上がりだと思ってます。単価交渉を切り出しやすい環境を整えるのは、実はオーナーの利益にもなる。だからこそ、業者さんが交渉しやすい仕組みを持っているマッチングを併用しておくと、値上げか撤退かの二択で詰まずに済みます。

値上げ交渉が「当然の権利」になった2024〜2026年の法制度変化

まず結論から言うと、いま清掃業者さんが単価を上げてほしいと言うのは、法制度の後押しがある正当な行動です。オーナー側が「なんで急に」と反論するほうが、むしろ立場的に弱い。ここを最初に押さえておくと、交渉の入口の言い方が変わります。

2024年11月1日にフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されました。個人事業主として清掃を請けている業者さん、または従業員を雇わずに一人親方で回している業者さんは、この法律の保護対象です。発注者は書面での取引条件明示、一方的な報酬減額の禁止、受領拒否の禁止などが義務化されています。

さらに2026年1月1日には、下請法が改正されて「取適法(中小受託取引適正化法)」に生まれ変わりました。この改正で、コスト上昇分を反映しない一方的な単価据え置きが「買いたたき」として運用上明確に問題視されるようになっています。公正取引委員会の運用基準では、下請代金の額の決定にあたり十分な協議が行われたかどうかが判断要素として重視されると示されています。

「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を根拠にする

私が交渉を持ちかけられたとき、業者さんから提示されて一番効いたのがこの指針でした。内閣官房と公正取引委員会が2023年11月に策定し、2024年2月に発出、その後2025年1月1日付で改正された「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」です。持続的な賃上げを実現するために、労務費上昇分を発注者が転嫁しやすい環境を作るためのもので、発注者・受注者双方の行動指針が「12の行動指針」として整理されています。

ポイントは、受注者から労務費上昇分の価格交渉が求められたら、発注者は協議のテーブルに着かなければならないという点です。無視した場合、フリーランス新法・取適法の運用で不利になる。この指針は「知ってる発注者」と「知らない発注者」で対応が明確に分かれます。業者さん側から名前を出して交渉するだけで、後者は態度が変わることが多いです。

最低賃金の実額を計算に入れる

東京都の最低賃金は2025年10月3日から時給1,226円になりました。2024年は1,163円だったので63円の上げ幅、率にして5.4%です。2029年までに全国加重平均1,500円という政府目標があるので、この流れは続きます。

清掃1件90分・スタッフ1人で回す場合、人件費だけで1,839円。実際には移動時間・待機・報告書作成が乗るので、1件あたり実働2時間相当(2,452円)と見るのが現実的です。ここに社会保険や労災、洗剤・掃除機の消耗、車両費、リネン運搬、事務コスト、そして利益を積むと、単価5,500円で回してくれと言われても業者さんに残るものがほとんどない。この計算をそのまま見せるのが一番説得力があります。

値上げ交渉で通る根拠の4点セット

結論から言うと、値上げが通る交渉には「相場データ・自社コストの内訳・法令や公的指針の一次情報・段階的な提案」の4点が揃っている必要があります。逆にこの4点が欠けると、オーナー側は「じゃあ他所に頼む」で終わらせやすい。私自身、感情論だけで値上げを打診されたときは正直、切り替えを検討しました。

1. 相場データ(他社より高くない証明)

オーナーが最初に確認するのは「その値上げ後の単価が、他所より高くないか」です。ここを先回りして提示できると、交渉が一気に短くなる。東京都心のワンルーム民泊清掃の実勢は、リネン込みで1回7,000〜9,000円が編集部調べの中央帯(広さ・頻度・繁忙期対応で変動)。1LDK・45㎡クラスなら9,000〜12,000円。この帯の中間を狙う値上げなら、オーナーは反論しづらいです。

過去記事で東京の民泊清掃1回あたりの妥当な料金を広さ別に整理しているので、業者さん側からも同じような相場情報のリンクを添えると、オーナーは「この人は市場を分かって話している」と受け取ります。相場を無視した提案は、逆に信頼を落とします。

2. 自社コストの内訳(値上げ額の妥当性)

「原価がこれだけ上がったので、この単価にしたい」を1枚のシートで見せられると強い。項目は最低限、人件費(最低賃金×実働時間)・移動費・洗剤消耗品・リネン運搬・保険・事務コスト・利益率で7項目。細かい数字は要らないですが、「単価8,000円のうち人件費が2,800円、材料500円…」と積み上げで説明できるだけで、オーナー側は「じゃあ7,500円ならどう?」と具体的な話に入れます。

私が実際にやり取りしたケースだと、値上げ額の内訳を出してもらえたときは全額飲みました。逆に「厳しいので上げてほしい」しか言えない業者さんには、条件を絞って半分だけ受けました。差はここだけです。

3. 一次情報の引用(法令・指針)

最低賃金の改定額(東京都1,226円・2025年10月3日発効)、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(内閣官房・公正取引委員会)、取適法の買いたたき運用基準、フリーランス新法の書面明示義務。この4つのうち1つでも本文に引用して交渉文を送ると、通り方が変わります。

ここは重要。オーナー側の抵抗感は「業者側の都合の押し付け」と感じるかどうかで大きく変わります。公的な一次情報を根拠にすると、「業者の都合」ではなく「制度上の要請」になる。心理的な壁が下がります。

4. 段階的な提案(着地点を用意する)

いきなり「5,500円→8,000円」は通りません。私なら反射的に警戒します。「まず来月から6,500円、半年後に7,000円、リネン単価改定は年明けに再協議」のような段階案が示されると、こちらもキャッシュフローの調整が効く。段階案には、断られたときの代替(オプション有償化・繁忙期割増・最低ロット設定)まで入れておくと、交渉のテーブルが折れません。

値上げ交渉の伝え方|私が「通す」と決めた3通のメール

結論から言うと、値上げの伝え方は「予告→根拠共有→協議依頼」の3段階に分けるのが通りやすい。1通のメールで全部を言おうとすると、オーナー側は身構えます。時間差で情報を渡すと、こちらも考える時間ができる。

第1通(予告):値上げの意向と背景をやわらかく共有

いきなり金額を出さない。「東京都最低賃金が2025年10月に1,226円へ改定されたこと、燃料費・洗剤費の上昇があり、来年1月からの単価改定について、11月中に一度お話をさせてください」くらいの温度。ここで日程だけ押さえる。この段階でオーナーが構えなければ、交渉の8割は成功と思ってます。

第2通(根拠共有):数字と一次情報を先に渡す

面談や電話の1週間前に、原価内訳表と参考リンク(最低賃金・労務費転嫁指針)をメール添付で送る。「当日ご説明します」ではなく「事前にご確認ください」の姿勢が効きます。オーナーは平日日中に業者と話せない兼業層が多いので、資料を先に読ませてくれるのは助かります。

第3通(協議依頼):金額と着地案を提示

面談当日または直後に、正式な単価改定案を書面で送る。ここに「段階案」「代替案(作業範囲の見直し・オプション有償化)」「解約予告期間の再確認」まで入れると、フリーランス新法の書面明示義務にも合致するので、オーナー側の弁護士確認もスムーズです。私はこの段階まで来た業者さんの提案は、原則ほぼそのまま飲んでます。

見積書の書き方そのものが不安な場合は、以前まとめた見積書テンプレートに入れるべき12項目を参考にすると、値上げ後の単価が「なぜこの金額か」を明細で示せます。値切られない書き方の型です。

オーナーが「値上げを断りたくなる」5つの言い方(避ける)

結論から言うと、断りたくなる交渉には共通のパターンがあります。私が過去に断ったケースを整理すると、以下の5つが目立ちました。逆にこれをやらなければ、それだけで通る確率が上がる。

  • 金額だけ通告して根拠を示さない(「来月から8,000円で」だけ)
  • 他社の悪口や業界の愚痴が長い(オーナーは巻き込まれたくない)
  • 予告期間が短い(「来週から」は無理。最低1〜3ヶ月)
  • 比較対象を出さない(周辺相場の中で自社がどこか示さない)
  • 断られたときの代替提案がない(「じゃあ辞めます」で終わらせる)

特に3番目の予告期間は、フリーランス新法との関係でも重要です。継続的な業務委託を解約する場合、原則30日以上前の予告が必要です。値上げが決裂して契約解除になる可能性があるなら、その予告期間も逆算した交渉スケジュールを組む必要があります。慌てて交渉しても、オーナー側が「他社探しの時間が取れない」と感じると、その場で断ります。

一社だけに依存している業者さんは、交渉のカードが弱くなる。掛け持ちを増やしておく、あるいはマッチングに登録して案件の入口を広げておくと、交渉での立場が変わります。オーナー相手に一社依存だと、値上げの前に「切られる」不安が先に立って言い出せない。この構造を変えないと、値上げ交渉は毎回きつくなります。

案件の入口を1つに絞らない選択肢として、業者向けのマッチングに登録しておくのは実効的です。オーナー側から見ても、繁忙期に追加物件を頼める業者さんは重宝します。

単価アップの現実的な着地点|値上げ以外に交渉できる5つの条件

単価そのものは動かせないと言われたとき、次に交渉すべきなのは「単価以外の条件」です。実質的には値上げと同じ効果があるのに、オーナー側が「単価を上げた」と認識しない項目がいくつかあります。私が業者さんとの間で実際に飲んでいるのは、以下の5つです。

交渉項目単価換算の効果オーナー側の抵抗感
リネン交換1セット追加を有償化(+500円/回)実質+9%低(従来サービス外)
繁忙期割増(GW・年末年始・お盆で+20〜30%)年5〜8%増低(相場と一致)
深夜チェックアウト対応(22時以降+25%)件数次第低(労基法根拠)
最低ロット設定(月4件以下は+1,000円/回)稼働低物件で効く中(説明必要)
キャンセル料の設定(前日30%・当日80%)逸失利益回収中(相場化してきた)

この5つのうち、特に効くのが繁忙期割増と深夜対応です。繁忙期は業界全体で1.2〜2倍が相場化していて、オーナー側も「そういうもの」と受け止めやすい。深夜対応は労働基準法で深夜割増(22時〜翌5時・25%以上)が定められているので、「労基法根拠です」の一言で通りやすいです。

これらの追加費目はオプション料金と追加費用の6系統としてオーナー側もすでに認識しています。単価そのものではなく明細を厚くする方向で交渉すると、断られにくい。

作業範囲を減らすカードも持つ

逆方向のカードとして、「単価は据え置きでいいが作業範囲を減らす」提案もあります。ベランダ清掃を隔回にする、冷蔵庫内の拭き上げを月1回に変える、リネン運搬を別業者に切り出す、など。オーナー側から見ると「サービス縮小」ですが、実質は時間単価の値上げです。単価を上げるより通りやすいことがあります。

値上げが決裂したときの実務対応

結論から言うと、決裂しても慌てない準備をしておくのが交渉力の源泉です。「値上げが通らないなら撤退します」を切れるカードにできるかどうかで、オーナー側の対応が変わる。ここが弱いと、いくら論理を積んでも足元を見られます。

解約予告は書面で30日前が原則

フリーランス新法では、6ヶ月以上継続している業務委託の解除・不更新について、原則30日前までの予告が定められています。値上げ交渉が決着しなかった場合の撤退も、この期間を守るのが安全です。逆にオーナー側から「じゃあ来月から他社にする」と言われた場合も、この30日ルールが業者側を守ります。

相場感を持って交渉テーブルに戻る

一度断られてもすぐ辞めない。3ヶ月後に、繁忙期の見積もりや別物件の相談に絡めて再提案するケースもあります。オーナー側は他社見積もりを取ってみて「思ったほど下がらない」と気づいた頃に、話が動くことがあります。この間に自社の稼働率と原価をきちんと開示できる資料を作っておく。

相談窓口を知っておく

明らかに買いたたきに該当する対応を受けた場合、公正取引委員会や中小企業庁の「フリーランス・トラブル110番」(第二東京弁護士会が受託運営)に無料で相談できます。使うかどうかは別として、選択肢として知っておくと交渉時の心理的な余裕が違います。「相談窓口があるのを知っている業者」と「知らない業者」で、発注者の態度は変わります。

オーナー側の本音|値上げを飲んだケース・断ったケース

私が過去2年で受けた値上げ交渉は、3件の物件で合計6回。飲んだのが4回、断って業者切り替えになったのが2回。この差を振り返ると、通した業者さんに共通していたのは「先に相談してくれた」ことでした。

浅草の1LDKを担当してくれている業者さんは、最低賃金改定の1ヶ月前にLINEで一言、「10月の改定に合わせて単価のご相談をさせていただきたいのですが、来月お時間いただけますか」と送ってきました。そこから原価表→面談→書面提案の順で、1ヶ月半かけて8,500円→9,200円に着地しました。私は全額飲みました。

逆に大田区の物件で断ったケースは、深夜21時に「来月から2,000円上げてください、燃料も洗剤も上がってるので」の1通だけでした。金額の内訳もない、他社比較もない、代替提案もない。切り替えを決めるのに1週間もかかりませんでした。

この差を業者さん側から見ると、たぶんプライドの問題もあると思います。「値上げを頼む」ことに引け目を感じていると、金額だけ言って逃げたくなる。でも、私を含めたオーナー側は「先に相談してくれた」業者を信頼します。頭を下げに来る業者ではなく、対等な事業者として交渉に来る業者を選ぶ。この視点の転換が、値上げ交渉を成立させる一番大事な部分だと思ってます。

逆に、業者側から見て「このオーナーとは長く付き合えるか」を判断する軸も、私自身は持っていてほしいと思ってます。契約前に確認しておく質問リストを業者側でも持っておくと、交渉の入口で「話が通じるオーナーか」を見極められます。値上げに応じない・書面を出さないオーナーは、そもそも避けたほうがいい相手です。

値上げ交渉のチェックリスト(保存版)

結論から言うと、以下のチェックが5つ以上埋まっていれば、値上げは通る確率が高いです。3つ以下なら、まず準備からやり直したほうが早い。

  • 東京都最低賃金1,226円(2025年10月3日発効)を根拠として本文に入れた
  • 労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(内閣官房・公正取引委員会)を引用した
  • 原価内訳表(人件費・材料・移動・保険・利益)を1枚のシートで用意した
  • 周辺相場(東京都心ワンルーム7,000〜9,000円等)を提示し、値上げ後の単価が中央帯であることを示した
  • 予告期間を1〜3ヶ月確保した(メールを送ってから改定発効まで)
  • 段階案(例:+500円→半年後にさらに+500円)を用意した
  • 代替案(オプション有償化・繁忙期割増・作業範囲縮小)を3つ以上準備した
  • 解約予告30日ルール(フリーランス新法)を頭に入れた
  • 相談窓口(フリーランス・トラブル110番等)を知っている
  • 複数のオーナー・案件と取引しており、一社依存になっていない

10項目のうち、私がオーナー側から見て一番効くのは4番目の「周辺相場との比較」です。ここが示されていると「妥当な値上げ」と受け取れる。逆に相場の外側に飛び出た金額を出されると、根拠が正しくても心理的に飲みづらい。

もう一つ、私が個人的に大事にしているのは「業者さんの原価が上がっているのは事実」という前提を、こちらが先に認めることです。オーナー同士で話していても、「今の単価で持続可能な業者はいない」という共通認識が広がっています。値上げを渋るオーナーは、5年後に清掃を頼める業者がいなくなる。私はこの危機感のほうが強いです。

読者に残しておきたい論点|「単価を上げる」より前にできること

ここまで値上げ交渉の型を書いてきましたが、実は交渉の前段階でやっておくべきことがあります。それは「同じ単価でも粗利が残る仕組みを作る」こと。ここを詰めないまま値上げに走ると、通ったところで根本解決にならないケースがある。

具体的には、移動時間の圧縮(近隣物件をルート化して1日で回す)、リネン運搬の集約(週2回のまとめ配送)、写真報告のテンプレ化(1件15分→5分に短縮)、繁忙期の応援スタッフ確保。この4つのどれかで1件あたり15分削れれば、実質的に時給1,000円分の値上げに相当します。単価交渉だけが答えではない。

ここは業者さん自身が判断する領域なので、私からこうしろとは言えない。ただ、値上げ交渉と業務効率化の両輪で回している業者さんが、結局は長く残っていると感じてます。この論点をどう扱うかは、経営者としての選択の余地が大きい部分です。

いずれにせよ、案件の入口を複数持っておくのは値上げ交渉のカード確保にもなります。オーナー側からしても、繁忙期に頼める業者さんの選択肢は多いほどありがたい。マッチングは値上げ交渉が決裂したときの受け皿として、また新規案件の入口として、両方の使い道があります。

よくある質問

Q1. 値上げを打診するタイミングはいつがベストですか?

最低賃金改定(例年10月)の1〜2ヶ月前、または年度末(1〜2月)の年間契約見直し期がやりやすいです。繁忙期(GW・年末年始・お盆)の直前は、オーナー側が枠を確保したい心理が強いので、比較的通りやすい傾向があります。逆に閑散期の切り出しは、オーナー側に「他社を探す時間がある」と思われて厳しくなりがちです。予告期間はフリーランス新法の解約30日ルールを意識して、改定発効の最低1ヶ月前に第1通を送るのが安全です。

Q2. 何%くらいの値上げが妥当ですか?

編集部調べでは、2024〜2025年の1回あたり値上げ幅は5〜15%が多いレンジ(東京都心)。最低賃金の上げ幅(2025年で+5.4%)と物価上昇分を足すと、年間で8%程度の値上げが根拠として説明しやすいです。ただし据え置き年数が長い場合は、まとめて15%以上を求めるより、段階的に2〜3年かけて上げていく提案のほうが通ります。金額は物件条件・広さ・頻度で変わるので、周辺相場(過去記事の広さ別実勢価格)を参照して中央帯を狙うのが現実的です。

Q3. 値上げを断られたら契約を切ってもいいですか?

可能です。ただしフリーランス新法の解約予告義務(6ヶ月以上継続の業務委託は原則30日前まで)を守る必要があります。書面(メールでも可)で通知してください。撤退を決めたなら、その旨をオーナーに伝えた上で、次の受け皿を並行して確保するのが安全です。マッチングサービスに登録しておくと、切り替え時の案件の入口が広がります。ただし感情的な決裂は業界の評判にも影響するので、最後のやり取りまで丁寧に進めることをおすすめします。

Q4. 発注者に「他社はもっと安い」と言われたときの返し方は?

その業者が本当に持続可能な単価かを一緒に検証する提案が有効です。「他社さんの単価にリネン・ゴミ処理・写真報告・保険が含まれているか、内訳を見比べてみませんか」と切り返すと、比較の土俵が「単価」から「明細」に移ります。実際には他社見積もりが安く見えて、後から追加費用が積み上がるケースが多いのが実情。相場の中央帯(東京都心ワンルーム7,000〜9,000円)を根拠として示すと、極端に安い業者の存在は例外だと理解してもらえます。安さだけで判断するオーナーは長期的に見て取引先として不安定なので、そこは無理に追わないのも選択肢です。

Q5. フリーランス新法や取適法は、法人化している清掃業者にも適用されますか?

フリーランス新法(特定受託事業者取引適正化法)は、原則として「従業員を使用しない個人事業主または一人法人」が保護対象です。従業員を雇っている法人清掃業者は対象外になります。ただし2026年1月1日から施行された取適法(中小受託取引適正化法・旧下請法)は、資本金基準に応じて中小の受注者を広く保護対象とします。買いたたきの禁止・書面交付義務などが適用されるので、法人でも一定規模までは保護されます。自社がどちらの法律の保護対象になるかは、公正取引委員会のガイドや、フリーランス・トラブル110番に問い合わせて確認するのが確実です。

Q6. 見つける君のようなマッチングに登録すると、単価は上がりますか?

マッチング経由の案件が既存取引より高いとは限りませんが、案件の入口が複数になることで一社依存の交渉リスクを下げられます。既存オーナーとの値上げ交渉が決裂したとき、すぐに代替案件に振り替えられる状態は、交渉力そのものを底上げします。またマッチング上では相場が可視化されているので、極端に安い単価で受注する必要がなく、自社の適正価格を守りやすい環境になります。単価アップというより「値下げ圧力を受けにくくする」効果のほうが実感しやすいと思います。

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