浅草の1LDKに、去年の秋に7泊のご家族が入ったことがありました。予約画面を開いたときの最初の反応は「7泊か、中間清掃どうしよう」でした。ワンオペ兼業でやっていると、この判断がいちばん迷います。入れれば数千円出ていく、入れなければレビューに響くかもしれない。金曜の夜、会社帰りの電車の中で悩んだ記憶があります。
結論から書くと、私は今、4泊以下は原則入れない、5〜6泊は判断、7泊以上は原則入れる、という運用にしています。ただしこれは私の3物件(新宿ワンルーム、浅草1LDK、大田区ワンルーム)の稼働と単価を前提にした数字で、誰にでも当てはまるわけじゃない。この記事では、住宅宿泊事業法の一次情報を確認しつつ、判断の骨組みを兼業オーナーの立場から整理します。
読み終わったあとに「うちならこう線引きしよう」と自分で決められる、そこを目指して書きます。
この記事の要点
- 住宅宿泊事業法5条は「定期的な清掃その他の宿泊者の衛生の確保を図るために必要な措置」を義務づけているが、連泊中の中間清掃の頻度そのものを条文で数字指定してはいない(一次情報:厚生労働省・国土交通省の施行要領)。
- 参考になるのは旅館業の衛生等管理要領で、東京都の運用ではシーツ・布団カバー類の交換は週2回程度が望ましいとされている(東京都のリネン類管理ガイドライン)。
- Airbnbの清掃料金は1予約あたり1回限りの請求という仕組みのため、連泊中の中間清掃を追加請求する標準機能はなく、宿泊料に織り込むか任意費用として案内文で合意を取る運用になる。
- 編集部調べで東京都心の民泊中間清掃の実勢は、ワンルームで3,000〜5,000円、1LDKで5,000〜8,000円が一般的なレンジ(広さ・作業範囲・時間帯で変動)。
- 兼業オーナーの実運用では、4泊以下は不要、7泊以上は入れる、5〜6泊は物件と季節で判断、が現実的な線引き。
ここから先を読む時間がなければ、まずは条件を入れて業者を横並びで比較しておくのが早いです。中間清掃の見積もりは通常清掃と別枠で聞く必要があるので、初回のヒアリング時点で確認したほうが後々楽になります。
結論:連泊中間清掃は「法律で必須」ではないが「何もしない」は危険
連泊中の中間清掃を、何日目に入れるかを条文で決めてくれる法律はありません。住宅宿泊事業法5条は、届出住宅について「各居室の床面積に応じた宿泊者数の制限、定期的な清掃その他の宿泊者の衛生の確保を図るために必要な措置」を講じるよう義務づけていますが、頻度の具体日数は書かれていません。厚生労働省・国土交通省が出している施行要領(ガイドライン)を読んでも、清掃を定期的に行うこと、寝具類を清潔に保つことが柱で、「何泊目に入れる」という数字での指定はない、というのが読み方の基本です。
ただし、法律に数字がないことと「何もしなくていい」は違う話です。5条の趣旨は宿泊者の衛生確保なので、「7泊させて一度もシーツを換えなかった」は、行政指導が入ったときに説明できるか、という別の問題になる。ここが判断の分かれ目です。
参考になるのは旅館業の衛生等管理要領
民泊は住宅宿泊事業法で規律されるとはいえ、衛生の考え方は旅館業側の運用が参考になります。東京都のリネン類管理に関する資料では、シーツ・布団カバー類の交換・洗濯は週2回程度行うことが望ましい、という考え方が示されています。これは旅館業を対象にした運用ですが、「1週間泊まっているのにシーツを一度も換えない」は衛生の一般常識からずれている、という判断の目安にはなります。
私はこの週2回程度を頭に置いて、「7泊なら最低1回はリネン交換を入れる」を最低ラインにしています。ただし、これは業界に精通した誰かに教わったわけではなく、行政窓口や公表資料を読んで自分で線引きした数字です。物件が違えば線引きも変わるはず。
私の判断軸:4泊/5〜6泊/7泊以上で分ける
実運用ベースで書きます。3物件を回してきた結果、いま私は宿泊日数を3つに割って対応を変えています。
| 宿泊日数 | 中間清掃 | 代替対応 | 費用感(編集部調べ・都内) |
|---|---|---|---|
| 1〜4泊 | 原則なし | タオル追加補充・ゴミ袋差し入れ | 0円(既存アメニティで対応) |
| 5〜6泊 | 物件と季節で判断 | リネン差し入れ or 簡易中間 | 0〜3,000円 |
| 7〜13泊 | 1回入れる | フルではなくリネン交換+水回り中心 | 3,000〜5,000円 |
| 14泊以上 | 週1回入れる | フル清掃に近い作業 | 5,000〜8,000円/回 |
金額は編集部調べで、東京都心のワンルーム〜1LDKを想定した目安です。広さ・時間帯・繁忙期で変動します。深夜早朝の割増については、以前まとめた深夜・早朝の民泊清掃の割増相場のほうに詳しく書きました。
4泊以下を切っている理由
3〜4泊なら、ゲストは荷物を広げて生活を始めた瞬間、他人が入ってきて片付けられるほうがストレスです。海外ゲストは特にそうで、「4泊で清掃入りますね」と伝えたら「入らなくていい」と返信が来た経験が過去に何度もあります。新宿の部屋で去年、4泊のフランス人カップルに提案したときも即座に断られました。そう。頼まれてもいない親切はコスト。
代わりにやっているのは、チェックイン時にタオル・トイレットペーパー・ゴミ袋を通常より1〜2セット多めに置くこと。追加費用はほぼゼロで、レビューでの不満はこの5年間ほぼゼロです。
5〜6泊で悩むときの分かれ目
この帯がいちばん判断が難しい。私は3つの要素で決めています。夏場か冬場か(汗のかき方が違う)、大人2名以下か3名以上か(リネンの消耗が違う)、Airbnbのメッセージで「洗濯機ありますか」と最初に聞いてきているか(自分で回す前提のゲストは中間不要のことが多い)。
夏の浅草1LDKに3名で6泊、というパターンだと、私はほぼ中間を入れます。冬の新宿ワンルームに1人で5泊なら入れません。この判断の精度は、リネンの在庫にも直結します。稼働と枚数の逆算については、リネン在庫の必要セット数の計算のほうに書いた式が参考になるはずです。
7泊以上で入れる理由
7泊を超えたあたりから、シーツやタオルの匂いが変わり始めます。これは私が実際に7泊後の部屋に自分で入って確認した感覚で、汗と皮脂の混ざった独特の匂いが出てくる。次のゲストが同じ部屋に入るときの第一印象を守るため、というより、途中で入るゲスト自身の快適性のために必要だと考えるようになりました。
正直、最初は費用がもったいなくて入れていませんでした。3年前は7泊でもスルーしていた。ただ、「途中で不快になった」というレビューが1件付いたときに考え方が変わりました。星1つ落ちるダメージのほうが、中間清掃1回の数千円より重い。
中間清掃のタイミングは「日数の真ん中」より「曜日と生活リズム」で決める
7泊のゲストに中間を入れるとして、何日目に入れるかで悩んだことはありませんか。私は最初、単純に真ん中の4日目に入れていました。ただ、これがうまくいかない日が多かった。ゲストは観光で外出しているのか、部屋で仕事しているのか、まったく違うので。
観光型ゲストは外出が読みやすい日を選ぶ
浅草の1LDKに入る欧米ゲストは、平日昼間はほぼ外出しています。私が組むときは、宿泊3〜4日目の平日午前中を第一候補にする。日曜午前は部屋にいる確率が高いので避けます。
ビジネス滞在は夕方以降 or 週末昼を狙う
新宿の部屋は出張ゲストが多く、平日昼は部屋で仕事している人が意外に多いです。この場合は本人と相談して、夕方の外食時間や土曜の日中を使います。
連泊中の対応をどこまでやるか、ゲスト満足度とのバランスは、以前中間清掃と満足度のバランスを3物件で整理した記事にも書いています。あわせて読むと判断軸が具体化するはず。
中間清掃の作業範囲:フル清掃と分けて考える
中間清掃はチェックアウト後のフル清掃と同じではありません。むしろ、同じ範囲を頼むと料金が跳ね上がるし、ゲストにも負担になる。私が業者に依頼するときは、範囲を明確に絞ります。
依頼する側の実務としては、シーツ・枕カバー・バスタオル・フェイスタオルの交換、浴室と洗面台の水回り拭き上げ、トイレ清掃、ゴミ回収と新しい袋のセット、消耗品(アメニティ・トイレットペーパー)の補充。ここまでで、ワンルームなら30〜45分、1LDKでも60分程度です。掃除機がけや床拭き、キッチンの深い洗浄はゲストのプライバシー配慮の観点からも省く方針にしています。
ゲストの荷物には基本的に触れない、という一線を業者と共有しておくことが大事です。触ったつもりがなくても、テーブルの上のものを少し動かしただけでクレームになった例を聞いたことがあります。私は初回打ち合わせで「ゲストの私物ゾーンは指一本触れない」と紙で渡すようにしています。
料金の考え方:通常清掃の6〜8割が現実的なライン
中間清掃は作業範囲を絞る分、通常清掃より安く設定してもらえるのが一般的です。私が受けている見積もりの傾向としては、通常清掃料金の6〜8割程度に収まることが多い。編集部調べで、東京都心のワンルームなら3,000〜5,000円、1LDKなら5,000〜8,000円がよく見るレンジです。ただしこれは物件・時間帯・繁忙期で動きます。
気をつけたいのは、通常清掃と同じ単価を提示してくる業者もある、ということ。理由は業者側から見ると出動コスト(移動時間・準備・道具運搬)は同じだからです。それ自体が不当なわけではないので、そう言われたら「作業時間短い前提でこの単価は妥当か」を発注側として自分で考える必要がある。
Airbnbの清掃料金には乗せられない
ここで意外と知られていないのが、Airbnbの清掃料金は1予約あたり1回限りの請求という仕様であること。連泊中の中間清掃を追加料金として自動で乗せる標準機能はありません。だから中間清掃分は、宿泊料に薄く織り込んでおくか、リゾートフィーとして設定するか、任意費用として案内文でゲストに提案して同意を取るか、のどれかになります。
私は3物件とも、6泊以上の予約が平均して月何件あるかを集計して、その回数×中間清掃の実費を、通常の1泊単価にならしています。「見えないコスト」にしないための処理です。
いま業者を選び直している段階なら、条件を絞って複数社を横並びで見るのがいちばん早いです。うちの物件みたいに3件同時に見積もりを取るのは、電話ではしんどい。
案内文の作り方:入れる/入れないをゲストに任せる文面
中間清掃で最大のトラブルは「勝手に入られた」というクレームです。日本のホストなら悪気なくやっているつもりでも、欧米ゲストからすると住居侵入に近い感覚を持たれることがある。私は必ず、事前メッセージで許可を取る運用にしています。
Airbnbのメッセージで、チェックイン3日前くらいに送っている文面はだいたい以下のような内容です。「7泊のご滞在ありがとうございます。ご希望があれば、滞在4日目に無料で簡易清掃(シーツ・タオル交換、水回り拭き上げ、ゴミ回収)に伺えます。作業時間は45分ほど、ご在室でも外出中でも可能です。不要な場合はその旨お知らせください。無料ですのでご心配なく」。
この「不要な場合はその旨」の一文が重要で、断りやすい設計にしておくとゲストとの関係が壊れません。実際、半分くらいは「不要です、ありがとう」と返ってきます。それでいい。押し付けない。
清掃業者側にとっても、案内文はゲスト対応の起点になります。清掃業者向けの初回ヒアリングで確認すべき10項目には、中間清掃の可否や案内文の扱いも入れておくと後々もめません。
中間清掃を「入れない」ときの代替策
費用や物件条件で中間を入れない選択をするなら、代替でやることを決めておくと安心です。私が3物件でやっているのは以下の3点。
リネンの追加セットを最初から置く
5泊以上の予約が入ったら、シーツ1セットとタオル2セットをクローゼットに追加で置きます。ゲストが自分で交換したければ換えられる。実際、7泊の欧米ゲストは半分以上が自分で換えています。これがいちばんコスパのいい対策です。
ゴミ出し日カレンダーを分かる場所に貼る
長期滞在で最も物理的に困るのがゴミです。玄関に地域のゴミ出し日と分別ルールを英日併記で貼っておく。都内の民泊ゴミは事業系扱いになるルールがあるので、この扱いは民泊のゴミ処分と事業系ごみの条件のほうを先に確認しておいたほうが安全です。
週の中間で「困りごとないですか」と一度連絡する
これは無料でできて効果が高い。7泊の3〜4日目に短いメッセージを送る。「滞在半ばですね、何か困りごとがあれば言ってください」。これだけでレビューの温度が変わることが多いです。私は3年前からこれを続けていて、平均評価が体感で0.1〜0.2上がりました。
中間清掃で見落としがちな法規・記録の話
中間清掃は「その場で終わる作業」に見えて、実は記録の対象になります。住宅宿泊事業法の趣旨から、届出住宅の清掃記録を残しておくことは、行政指導が入ったときに衛生確保をきちんと行っていた証拠になる。中間清掃も同じ扱いにしておくと安全です。
私は業者に写真報告と作業時間の記録を必ず依頼しています。写真報告の運用は写真報告の撮影ポイントにまとめているので参考にしてください。中間清掃の場合はゲストの私物が写らないアングルで、ということを事前に伝えるのがポイントです。
民泊清掃を家族や知人に手伝ってもらうときの扱いは、家主居住型か家主不在型かで変わります。中間清掃を業者ではなく身内でやろうと考える人もいますが、届出区分によっては注意が必要です。詳しくは家族・知人による民泊清掃の合法性を確認したほうが安全です。
最後に:ここは自分で線引きしてほしい
この記事で書いた4泊・5〜6泊・7泊以上という基準は、私の3物件の稼働と単価とゲスト層で決めた線です。同じ都内でも、単価2万円のハイエンド物件と単価8千円のバジェット物件では、中間清掃を入れる合理性が違うはず。ハイエンドならもっと前倒しで入れるべきだし、バジェットなら7泊でもスキップして代替でしのぐ選択が正解のことも多い。
正直、私自身、いまも迷いながらやってます。去年の冬に14泊のゲストに週1回中間を入れたら、「入られるのが煩わしい」と最終レビューで軽く指摘されて、翌週の同じ長さのゲストは希望制に切り替えました。決まった答えは、ない。
自分の物件で、自分のゲスト層で、いくつか試してデータを取るしかない。この記事はそのための材料集めのつもりで書きました。
そして、その試行錯誤の途中で業者選びに詰まったら、条件を入れて比較できる仕組みを一度使ってみるのがいちばん早いです。中間清掃対応可、深夜早朝対応、写真報告あり、といった条件で絞れるかどうかを見てください。
よくある質問
Q1. 民泊の連泊で中間清掃を入れないと違法になりますか?
住宅宿泊事業法5条は「定期的な清掃その他の宿泊者の衛生の確保を図るために必要な措置」を義務づけていますが、中間清掃を何泊目に入れるという頻度の数字は条文に書かれていません。したがって「入れないと即違法」と断定することはできません。ただし1週間以上リネン交換をしないなどの運用は、衛生確保の観点から行政指導のリスクがあります。詳細はお住まいの自治体の民泊窓口で確認してください。
Q2. 中間清掃の料金をゲストに追加請求できますか?
Airbnbの清掃料金は1予約あたり1回限りの請求という仕様のため、標準機能で中間清掃を自動で追加請求することはできません。宿泊料に薄く織り込むか、リゾートフィーで設定するか、任意の追加サービスとして案内文で提案し合意を取るか、のいずれかになります。予約後に一方的に追加請求すると、キャンセルや低評価につながるので避けたほうが安全です。
Q3. 中間清掃を業者に頼まず自分でやる場合の注意点は?
家主居住型(届出区分による)で自ら清掃する運用は認められますが、家主不在型で管理業者に委託している場合は、契約上の作業範囲を確認してください。また、ゲスト在室中や在留物のあるタイミングでの入室は、事前の明示的な同意(メッセージ記録に残る形)を必ず取ることが実務上のトラブル回避に直結します。清掃業務の法規上の扱いは自治体差もあるため、届出時の窓口で運用を確認するのが安全です。
Q4. 中間清掃の相場はいくらが妥当ですか?
編集部調べで、東京都心のワンルームで3,000〜5,000円、1LDKで5,000〜8,000円が一般的なレンジです。作業範囲を絞る分、通常清掃料金の6〜8割程度に収まる業者が多いのが実感です。ただし出動コストが同じという理由で通常清掃と同額を提示する業者もあり、これ自体は不当ではありません。作業時間・持ち出しリネン枚数・移動距離を踏まえて発注側で判断する必要があります。
Q5. ゲストが中間清掃を拒否したらどうすればいいですか?
拒否された場合は素直に見送り、代替でリネンの追加セットとゴミ袋・アメニティを差し入れるのが実務的な落とし所です。拒否の記録(メッセージのやり取り)を残しておくと、後から衛生確保の観点で指導が入ったときに、ホスト側が申し出た事実を示せます。ゲストの意思決定を尊重した上で、代替措置を取ったログを残す、というのが安全な運用です。
Q6. 中間清掃で作業者が入るとき、ゲストの荷物には触れていいですか?
原則、触れないほうが安全です。テーブルの上のものを避けて拭き上げるだけでも、後から「触った」と言われるリスクがあります。事前に業者と「ゲストの私物ゾーンは触らない、床に置いてある衣類等もそのまま」というルールを紙で共有しておくことをおすすめします。写真報告時にも私物が写らないアングルを指定しておくと、プライバシー面のトラブルを避けられます。

