金曜の22時に、清掃業者3社へ同じ問い合わせフォームからメッセージを送ったことがある。返ってきたのは翌週の月曜午後、しかも全社「もう少し詳しく教えてください」の一行。週末が丸ごと止まった。あのとき伝え方を変えていれば、月曜には見積書3枚が並んでいたはずだ、と今でも思う。
民泊の清掃業者に見積もりを頼むときに一番痛いのは、金額のズレより「聞き返しの往復」で日数が溶けることです。新宿・浅草・大田区で3物件を回している兼業オーナーとして、平日日中に電話を折り返せないタイプの発注者にとって、最初のメール1通で情報が揃っているかは死活問題だと感じてます。
この記事では、見積もり依頼メールに必ず入れる7項目を、私が実際に使っているテンプレの順番で並べます。相場や見積書の読み方ではなく、その手前の「発注情報の渡し方」に絞った話です。
この記事の要点
- 民泊清掃の見積もり依頼で最初のメールに入れるべき情報は、物件情報・広さと間取り・稼働頻度・リネン運用・ゴミ処理・鍵の受け渡し・希望開始日の7項目(編集部の実運用ベース)
- 1通目でこの7項目が揃っていると、東京都心の業者なら概ね1〜3営業日で見積書が返ってくることが多い(繁忙期・業者規模で変動)
- 特に抜けやすいのは「ゴミの排出ルール」と「鍵の受け渡し方法」で、この2点が未確定だと見積もり自体が保留になりやすい
- 相場感の裏取りは、くらしのマーケットの記事で示された「1時間あたり5,000円程度が目安」といった公開情報と自分の物件条件を照合するのが近道
- 住宅宿泊事業法第5条の衛生確保措置は届出住宅の事業者が責任者であるため、業者に丸投げする書き方ではなく「委託する範囲」を明示する
ここまで固めておくと、業者側も見積もりの精度を上げて返せます。次の一歩として、条件を入れるだけで複数社から比較見積もりを取れる仕組みを使うと、7項目を書く手間も一度で済みます。
なぜ「発注情報の渡し方」で見積もりの精度と速度が決まるのか
見積もりの返信が遅い一番の理由は、業者側が価格を出せないからではありません。「この条件では前提が置けない」と判断された瞬間に、後回しになるからです。忙しい清掃会社は、条件が揃った案件から着手します。
私が最初に失敗したのは、新宿の物件を初めて外注に切り替えた2023年の春でした。「25㎡くらいのワンルームです、Airbnb運営で清掃をお願いしたいです」だけで送ってしまい、3社中2社から「間取り図と鍵の受け渡し方法をお知らせください」の返信。ここで48時間が消えました。
清掃1回の料金相場について、くらしのマーケットマガジンの解説では
「依頼する事業者によって料金形態が異なりますが、1時間あたり5,000円程度が掃除代金の目安です。これに加えて、洗濯代や駐車場代などが必要です」(くらしのマーケットマガジン)
と紹介されています。時間単価が基準になっている以上、業者は「作業時間の見立て」を立てないと金額を出せません。作業時間の見立てを立てるための情報が、これから紹介する7項目です。時間単価は変動するので、あくまで一つの目安として扱ってます。
1通目で7項目そろうと何が変わるか
私の体感だと、7項目そろえたメールを送った場合、東京都心の中堅業者からの返信は概ね1〜3営業日以内に見積書が届きます。逆に情報が半分以下だと、質問メールが2〜3往復して1週間近くかかることも珍しくない。この差は、繁忙期の枠取り競争では致命的です。
項目1: 物件の所在地とアクセス(区・最寄駅・建物形態)
最初に伝えるのは、物件の所在エリアと建物形態です。番地までは1通目に書かなくてOKですが、区名と最寄駅は必須。清掃業者は対応エリアの外だと即断りますし、逆にエリア内なら「うちの巡回ルート上か」を判断して優先順位を決めます。
私の場合、大田区の羽田寄りのワンルームを頼むとき、都心の業者だと出張費が別途載ることが多い。一方、蒲田・大森周辺を巡回している地域業者だと基本料金だけで済みます。この差は1回2,000〜3,000円くらい変わることがあるので、最初に地域を明示する意味は大きいです。
建物形態も添えます。マンションかアパートか、戸建てか。エレベーターの有無、搬入経路の階段の有無、駐車スペースの有無。浅草の1LDKは6階でエレベーターありですが、たとえば古い建物で4階まで階段のみ、といった条件は清掃員の疲労と作業時間に直結するので早めに伝えます。
項目2: 広さと間取り、寝具の数
広さは㎡表記で正確に。「ワンルーム」だけでは20㎡から40㎡まで幅がありすぎます。私は毎回「◯㎡・◯K/◯LDK・洋室◯室・和室◯室」で書いてます。可能なら間取り図の画像を1枚添付する。これで作業時間の見立て精度が跳ね上がります。
寝具の数も重要です。ダブルベッド1台か、シングル2台か、和室に布団2組を敷くのか。ベッドメイキングは1台あたり作業時間が意外にかかるので、寝具構成が違うだけで見積もり金額が変わります。うちの浅草の1LDKはシングル2台+ソファベッド1台で最大4名対応にしてますが、清掃時間はワンルームの1.6倍くらいです。
水回りの数もセットで書く
浴室・洗面・トイレの数もあわせて。ユニットバスか独立か。バスタブありなしか。1LDKでもトイレが2つある物件と1つの物件では、水回り清掃だけで20〜30分違います。この情報がないと業者は多めに見積もらざるを得ず、結果的にオーナー側が損をします。広さ別の相場感は、1LDK・2LDK・戸建てそれぞれの実勢価格をまとめた記事で細かく整理しているので、自分の物件に近いレンジを把握しておくと交渉がしやすくなります。
項目3: 想定稼働頻度と清掃回数の見込み
「月に何回くらい清掃が発生しそうか」を伝えます。ここで多くのオーナーが遠慮して少なめに書きがちですが、業者にとってはボリュームが読めた方が単価を寄せやすい。私の場合、新宿の物件は「月10〜15回想定」、浅草は「月8〜12回想定」で伝えてます。
1回あたりの単価は稼働頻度で変わることが多いです。月20回以上を安定して回せる物件なら単価を数百円下げてくれる業者もあります。逆に月2〜3回のスポットだと、業者側の移動効率が悪くなるので高めに提示されます。
連泊が多いか単泊が多いかも書けるとベター。連泊率が高いほど清掃回数は減りますが、1回あたりの汚れ具合は増える傾向があります。ここは業者との相性を見る材料になるので、無理に細かく書かなくてよいけど「連泊比率が高めです」の一言はあると親切です。
項目4: リネンの運用方法(レンタルか自前か)
リネンをどう回すかは、見積もりの構造そのものを変えます。パターンは大きく3つ。①リネン業者と別契約で清掃業者はセットするだけ、②清掃業者が自社でリネンレンタルを提供、③オーナーが自前で洗濯・保管して現地に置いておく。1通目の依頼メールで、このどれを想定しているか書いてください。
私は3物件とも①のパターンで、リネン業者と直接契約してます。清掃業者にはセット作業だけ頼む形なので、見積もりには「リネン持ち込み・セット作業のみ」と明記します。②③をごちゃっとさせると業者が混乱して、リネン料金の二重計上が起きやすい。
レンタルと自前の損得は稼働日数で分岐点が変わります。過去に月間稼働日数別のシミュレーション記事でまとめたので、そもそもリネンをどう回すか決まっていない段階なら先にそちらで方針を固めてから見積もりに進んだ方が早いです。
項目5: ゴミの排出ルールと処理責任の切り分け
民泊のゴミ処理は事業系一般廃棄物として扱われます。観光庁の民泊制度ポータルサイトでは、住宅宿泊事業に起因して発生したごみの取扱いは廃棄物の処理及び清掃に関する法律に従い、当該ごみは事業活動に伴って生じた廃棄物として住宅宿泊事業者が責任をもって処理しなければならない、と明記されています。
清掃業者に何をどこまで頼むのかを、1通目で決めておく必要があります。パターンは3つあります。オーナー側で回収業者と契約して置いておく場所だけ決めるか、清掃業者に一時保管してもらい別途回収を回すか、清掃業者が処理まで含めて対応するか。金額は当然、この順番で上がっていきます。
そう。ここが一番、見積もりが止まりやすい。
私の失敗談。浅草の物件で最初に頼んだ業者は「ゴミは玄関前に出しておいてもらえれば清掃時に持ち帰ります」と口頭で言われて開始したのですが、契約書には「一般家庭ゴミのみ、事業系廃棄物は対象外」の一文があった。3ヶ月後に「量が多すぎるので追加料金を」と連絡が来て揉めました。処理の責任が誰にあるか、事業系ゴミの扱いをどうするかは、必ず文字で確認する。この経験は今も判断軸に残ってます。
依頼メールに書く具体文
「事業系一般廃棄物として自区の許可業者と別途契約する予定です。清掃時は分別と一時保管までお願いできますか?」のように、責任分界と作業範囲を分けて書くと、業者側も答えやすくなります。ここは自治体ルールが異なるので、お住まいの区の廃棄物担当窓口で事前に確認したうえで書き添えるのが安全です。
ゴミも含めて業務範囲を丸ごと切り出したい場合は、清掃だけ切り出す方法と丸投げ方式の差額を試算した代行会社の丸投げ費用の比較記事を先に見ておくと、見積もり依頼の粒度を決めやすいです。
ここまでで7項目のうち5つが埋まりました。残り2つに進む前に、依頼テンプレを一度手元に持っておくと迷いが減ります。
項目6: 鍵の受け渡し方法とチェックイン運用
鍵をどう渡すかは、清掃業者の入退室の段取りに直結します。スマートロック(暗証番号)か、キーボックスか、物理鍵の預かりか、管理会社経由か。1通目に書いておくと、業者側は入退室ルートの想定と作業時間の見立てを一気に進められます。
スマートロックの場合、清掃員ごとに個別暗証を発行できるか、共通暗証か、これも書けるとベターです。私は3物件ともスマートロック(Switchbotの旧モデル)を入れていて、清掃時は業者用に別番号を発行してます。過去にキーボックスの物件で暗証番号を業者に知られたまま契約終了した時、番号変更を忘れて数ヶ月放置してしまったことがあって、以来スマートロックに寄せてます。
「清掃開始・完了の連絡方法」もセットで書く。私は業者にはLINEのグループを作って、入室時と完了時に写真1枚と一言を投げてもらう運用にしています。この共有ルールがあるかないかで、業者側の管理コストが変わるので、単価にも反映されます。
項目7: 希望開始日と繁忙期の運用意向
いつから頼みたいのか。これを書かない依頼メールがけっこう多い。業者は「見積もりを取りたいだけ」なのか「◯月◯日から実務が始まる」のかで、対応の優先順位を変えます。私はいつも「◯月◯日以降の予約から実運用を想定」と1行入れます。
繁忙期の対応可否も1通目に。ゴールデンウィーク、夏休み、年末年始、桜シーズン、この4シーズンだけは前日夜まで枠が埋まって取れなくなることがあります。「繁忙期も同じ料金体系ですか、それとも割増ですか」と最初に聞いておくと、後から追加請求で揉めるのを避けられます。
チェックアウト後の清掃時間の確保についても、方針を書き添えると精度が上がります。連泊回転が多い週末に何時間の作業を想定するかは、チェックアウト後の清掃時間バッファの記事で整理してます。ワンルームで4時間、1LDKで5〜6時間が私の運用ラインです。
7項目を一枚にまとめた発注テンプレ
ここまでの7項目を、私が実際に業者に送っている依頼メールの構造で表にします。コピペしてそのまま使えます。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 1. 物件所在地 | 東京都新宿区◯◯(最寄◯◯駅徒歩◯分)、マンション6階、エレベーターあり |
| 2. 広さ・間取り・寝具 | 25㎡・ワンルーム・シングルベッド1台+ソファベッド1台(最大2名)、ユニットバス |
| 3. 想定稼働頻度 | 月10〜15回想定、連泊比率は6割程度 |
| 4. リネン運用 | リネンは別契約、清掃時はセット作業のみ依頼したい |
| 5. ゴミ処理 | 事業系一般廃棄物として自区の許可業者と別途契約予定、清掃時は分別と一時保管まで |
| 6. 鍵の受け渡し | スマートロック(清掃員用の個別暗証を発行)、開始・完了はLINEで写真1枚共有 |
| 7. 希望開始日と繁忙期 | ◯月◯日以降の予約から運用開始希望、繁忙期の料金体系もあわせてご提示ください |
この表を1通目のメール本文に貼るだけで、返信スピードが目に見えて変わりました。テンプレは編集部の実運用ベースなので、物件条件によって行を足し引きしてください。特定の書式を業者に強制する意図ではないです。
見積書が届いたあとに確認すべきこと
7項目を伝えて見積書が返ってきたら、次は書面側のチェックに入ります。基本料金・リネン・ゴミ・繁忙期割増・消耗品・保険・キャンセル規定の見方は、見積書で必ず確認すべき7項目の記事でまとめてます。「依頼時の7項目」と「見積書チェックの7項目」はセットで運用するのが個人的には一番安全です。
法令面で気をつけること(衛生確保措置と責任の所在)
民泊清掃を外注しても、衛生確保の責任がオーナー(住宅宿泊事業者)から消えるわけではありません。住宅宿泊事業法第5条は届出住宅について衛生確保のために必要な措置を事業者に義務付けています。関連する問い合わせ窓口として、観光庁の民泊制度ポータルサイトでは同法第5条関係(衛生確保の措置)は厚生労働省健康・生活衛生局生活衛生課、と明示されています。
だから見積もり依頼の段階で「業者に衛生面を丸投げする」書き方はしない方がいい。「オーナーが定めた清掃基準に沿って、以下の範囲を委託します」の建て付けにする。私は業者用にチェックリスト(水回り・寝具交換・アメニティ補充・ゴミ分別)を1枚渡していて、それを添付ファイルとして1通目に入れます。
細かい条例は自治体で異なります。届出前後の清掃・衛生の運用は、必ず所在地の保健所または区の民泊窓口に一度確認してから業者に発注してください。ここを業者任せにすると、後から自分に返ってきます。
1通目でここまで書くのは重すぎないか、という論点
正直、これだけ書くのは面倒です。忙しい発注者ほど「まず金額だけ知りたい」となりがちで、そう思う気持ちも分かる。ただ、7項目を渋って1通目を軽くしたときと、しっかり書いたときで、結果的にどちらが早く運用開始まで届いたかというと、後者だった、というのが私の3物件での実感です。
とはいえ、業者側から見て「情報が多すぎて逆に面倒な発注者」に映るリスクもゼロではない。ここは判断が分かれる論点として残しておきます。あなたの物件の稼働頻度、業者側の規模、繁忙期かどうかで、最適な情報量は変わります。まずは自分の3物件で使ってみて、返信スピードを2〜3社で比べてみるのがいい気がしてます。
一社ずつフォームを埋めるのが手間なら、条件を一度入力するだけで複数の清掃業者から見積もりを受け取れる仕組みを使うのが早いです。7項目のテンプレをそのまま流し込む使い方もできます。
よくある質問
Q1. 見積もり依頼は何社くらいに送るべき?
私の経験では3社が扱いやすい上限です。5社を超えると返信の管理が煩雑で、比較そのものが目的化してしまう。1社目で条件が合えばそのまま進める、という発注者もいますが、料金体系や繁忙期対応は業者ごとに癖が違うので、最低2社は取っておく方が安心だと感じてます。
Q2. 内見や現地確認は依頼前にお願いすべき?
ワンルームなら間取り図と写真だけで見積もりが出ることが多いです。1LDK以上、または特殊な間取り(メゾネット・戸建て)、ペット可物件、大型家具の多い物件は現地確認をお願いした方が正確な数字が出ます。うちの浅草の1LDKは初回だけ現地立会いをしました。所要時間はだいたい30分程度でした。
Q3. 相場より高い見積もりが返ってきた場合、値切っていい?
値切るというより、「なぜその金額なのか内訳を教えてほしい」と聞くのが正解だと思います。時間単価が高い、リネン込みの計算になっている、繁忙期割増が織り込まれているなど、内訳を出してもらうと自分の想定とのズレが分かる。エリア別・広さ別の相場は相場・料金の徹底解説記事にレンジをまとめているので、そこと突き合わせるとズレの正体が見えます。
Q4. 清掃業者が「リネンはこちらで提供します」と言ってきたら受けるべき?
ケースバイケースです。オペレーションが一元化できるメリットは大きいですが、リネン単価が別業者より高い場合や、シミ交換ルールが不透明な場合は要注意。私の場合、リネン業者と直接契約する方が総額で安く済みましたが、月間稼働20日を超えるような高稼働物件だとセット提供の方が得になることもあります。判断軸を持つには、まず月間稼働日数を可視化してから決めるのが早いです。
Q5. 業者から契約書のドラフトが来ない場合はどうする?
小規模な業者だと、口頭合意と請求書のみで契約書を交わさないところもあります。ただ、追加料金トラブルや損害賠償の責任範囲を明確にする意味で、書面での取り交わしを求めた方がいい。作業範囲・料金体系・キャンセル規定・損害時の対応、この4点だけでもメールで文字化しておけば後々の揉めごとを減らせます。私は浅草のトラブルの後、必ず書面かメール本文での取り交わしを条件にするようになりました。

