金曜の夜、会社帰りの電車で契約書のPDFを開いていた。3社目に頼もうとしていた清掃業者のひな型で、A4で3枚。読み進めるほど、何を書いていないかが気になってきた。鍵を紛失したときにいくらまで払ってくれるのか、繁忙期の当日キャンセルはこちら持ちなのか、写真報告が来なかった時にどう扱われるのか。全部、書いていなかった。
民泊の清掃業者と契約書を交わす時、テンプレのまま判子を押すと、あとで揉めるのは決まってオーナー側です。新宿・浅草・大田区で3件を回してきて、私は3回、契約書のことで痛い目を見ました。値段の話ではなく、条項の穴の話です。
この記事では、兼業でオーナーをやっている自分が、キャンセル・弁償・鍵管理の3つを軸に、契約書で必ず確認すべき条項を実務の温度感で整理します。法律の一次情報(民法・住宅宿泊事業法)と、都内で実際に受け取った見積書・契約書ドラフトを突き合わせた結果です。
この記事の要点
- 民泊清掃の業務委託契約は法的には準委任または請負に分類され、民法第651条または第641条に基づき当事者はいつでも解除できる。ただし相手方に不利な時期の解除は損害賠償対象になる(編集部確認:2020年改正民法)。
- 当日キャンセル料は編集部調べで料金の80〜100%が実勢。ただし民法上、実損害の立証がなければ請求が制限される場合があるため、契約書に違約金として明記する必要がある。
- 清掃業者の損害賠償上限は「1回の委託料相当」または「月額委託料の◯%」で設定されるのが一般的(B2B契約の実務通例)。故意・重過失を上限適用の除外にするのが安全側。
- 鍵管理は紛失時の交換費用(シリンダー交換1〜3万円、電子錠5〜15万円)を誰が負担するか、キーボックスの暗証番号更新頻度、再委託の可否まで契約書で明記する。
- 家主不在型民泊は住宅宿泊管理業者への委託が義務。清掃だけの契約と管理業務委託契約は別物なので、契約書の名称と守備範囲を混同しない。
一社ずつ電話して条件を詰めるのが大変なら、条件を入力するだけで清掃業者を比較できる見つける君を使うのが早いです。契約書のドラフトを持っている業者かどうかも、問い合わせ段階で判断がつきます。
民泊清掃の契約書は何契約?まず法的な位置づけを確認する
民泊清掃の業務委託契約は、法的には準委任契約か請負契約に分類されます。どちらに寄せるかで、解除やキャンセルの扱いが変わる。契約書の「本業務は準委任契約とする」の一文を、私は最初の頃、完全に読み飛ばしていました。
民法第651条は、委任契約について当事者双方がいつでも解除できると定めています。ただし相手方に不利な時期の解除は損害賠償の対象になる。2020年施行の改正民法で、この損害賠償の要件が「①相手方の不利な時期の解除」または「②受任者の利益をも目的とする委任の解除」に整理されました(e-Gov法令検索・民法第651条第2項)。清掃業者から見ると、繁忙期に急に切られたら来月の売上計画が崩れる、という話はここに引っかかる可能性があります。
一方、請負に寄せた契約なら民法第641条が効いてきます。仕事の完成前ならオーナー側からいつでも解除できる、ただし損害を賠償する。清掃1回ごとの都度契約なら請負寄り、月極で管理業務込みなら準委任寄り、というのが実務での感覚です。契約書のドラフトを受け取ったら、まず種別を確認する。
家主不在型は「管理業務委託契約」と「清掃委託契約」を分けて考える
ここが混乱の元。住宅宿泊事業法では、家主不在型の民泊は住宅宿泊管理業者への委託が義務化されています(法第11条、国土交通省の一次情報より)。国交省は「住宅宿泊管理受託標準契約書」を策定していて、こちらは管理業務全般の契約書。清掃だけを切り出して業者に頼む契約書は、別に必要になります。
私は最初、この2つをごちゃ混ぜにしていました。管理会社と清掃会社を別に契約するなら、清掃側の契約書は「清掃業務委託契約書」として独立させておく。名前がずれていると、後で保健所や税務で聞かれた時に説明が長くなります。家主不在型の要件そのものは、以前まとめた住宅宿泊事業法における清掃業務の扱いを整理した記事で細かく触れています。
キャンセル条項|「何日前まで無料か」より「何時基準か」を書く
キャンセル条項で最初に見るのは、料金率よりも「時刻の基準」です。前日キャンセル無料と書いてあっても、前日の何時までなのかが定義されていない契約書を、私は3社中2社で見ました。ここが空欄だと、揉める。
編集部調べで、東京の民泊清掃業者の当日キャンセル料は料金の80〜100%が実勢です(2025年時点、複数社の見積書を比較)。前日キャンセルは50%前後、2日前までなら無料が中位帯。ただしこれは相場であって、契約書に明記されていない限り、業者は民法上の実損害の立証を求められる可能性があります。だからこそ、業者側は違約金として書きたい。オーナー側もその方が予測可能で扱いやすい。
大田区の物件で、ゲストが到着30分前に予約をキャンセルしてきた日がありました。清掃業者はすでに現地に向かっていた。「実費として交通費と拘束時間分」で1回料金の70%を請求され、私は文句を言えなかった。契約書に時刻基準を書いていなかったので。
確認すべき5要素
| 要素 | 書き方の例 | 抜けていると起きること |
|---|---|---|
| 基準時刻 | 「清掃予定日前日の18:00を基準」 | 前日夜のキャンセル扱いで揉める |
| 料金率 | 「前日18:00以降50%、当日100%」 | 実損害立証を求められる/過大請求 |
| 不可抗力の扱い | 「災害・感染症等はキャンセル料免除」 | コロナ再燃時に一方負担 |
| 業者都合キャンセル | 「業者都合の場合、代替業者手配費を業者負担」 | ゲスト到着遅延の補填を全額オーナー負担 |
| 連絡手段 | 「LINE公式または指定メール、送信時刻を証跡とする」 | 電話でキャンセルしたが記録がない |
特に業者都合のキャンセル欄が空白の契約書が多い。オーナー側の当日キャンセルは細かく書いてあるのに、業者が来なかった場合の扱いが「別途協議」で終わっている。ここは対称に埋めるべきです。当日キャンセルの扱いを掘り下げた話は、以前当日キャンセル対応と契約条項でまとめています。
解約予告期間は30日か60日か
1回ごとのキャンセルとは別に、月額・継続契約の解約予告も忘れがち。清掃業界の実務では30日前予告が多いですが、繁忙期を跨ぐ場合、60日前を求める契約書もあります。私は新宿の物件で、乗り換えを決めてから解約予告期間を確認して、切り替え計画を2週間ずらしました。
民法651条は「いつでも解除できる」を原則にしていますが、契約書で予告期間を合意することは可能です。予告期間中の清掃回数分は支払う必要があるので、乗り換えの検討は予告期間の1.5倍の余裕を持つ。乗り換えのタイミングそのものは業者切り替えのタイミングにまとめました。
弁償条項|損害賠償の上限額と除外事由をどう書くか
弁償条項は、上限額・除外事由・故意重過失の扱い・保険の4点をセットで見ます。1つでも欠けると、事故が起きた時に責任の押し付け合いになる。
B2Bの業務委託契約では、受託者の賠償責任を「委託料相当額」または「直近3ヶ月分の委託料」で上限設定するのが実務通例です(複数の弁護士事務所の解説記事より)。清掃業者側から見ると、5,000円の清掃1回で床材を全損させたら弁償が数十万になる、というリスクを吸収したい。オーナー側から見ると、上限が低すぎると被害を回収できない。この綱引きになります。
私は3件目の契約で、「1事故あたり50万円を上限とする、ただし故意または重過失による損害はこの限りではない」という文言に落とし込みました。故意・重過失を除外にするのは、業務委託契約書の実務でよく採られる書き方です。清掃業者が乾拭き専用の床を水浸しにしたら重過失、うっかりコップを割ったら通常過失、みたいな線引きになります。
賠償の対象範囲を「間接損害」まで含めるか
民法416条は、通常損害と特別損害を分けています。特別損害は、予見可能性がある場合に賠償対象になる。民泊で言うと、清掃ミスが原因で当日ゲストの受け入れができず、返金と星1レビューが付いた、というのは間接損害・特別損害の領域です。
実務では「直接かつ現実に生じた損害に限る」と契約書に書かれることが多い。逸失利益(本来得られたはずの宿泊料)は除外される書き方です。オーナー側から見ると、これは飲めるラインとそうでないラインの境目。私は「直接損害+当該案件の宿泊料相当額」まで含めることで妥協しました。1泊分の宿泊料までなら業者側も飲みやすい。
損害賠償保険への加入義務を書く
ここが穴になりやすい。契約書に「業者は損害賠償責任保険に加入すること」と書いても、加入証明の提出義務がないと、口約束で終わります。私は「契約締結時および毎年の契約更新時に、保険証券の写しを提出する」まで書くようにしています。
個人事業主のフリーランス清掃業者に頼む場合、この保険が入っていないケースがあります。安さの理由の一つ。法人と個人の使い分けは法人業者と個人フリーランスの比較で細かく書きました。損害賠償の観点だけで言えば、保険加入の有無は個人業者を選ぶ最大の分岐点になります。
AirCoverと弁償条項の関係
Airbnbで運営している人は、AirCover for Hostsとの重複と補完を考える必要があります。ゲストの過失で家具が壊れた場合はAirCover、清掃業者の過失なら業者の賠償責任保険、という切り分け。契約書には「清掃業者の作業に起因する損害はAirCover申請対象外」と業者側が主張してくる可能性があるので、業者作業起因の損害は業者負担であることを明記しておく。
予約条件を入れて複数の民泊清掃業者を一度に比較したいなら、条件入力だけで見積もりが集まる見つける君を試すのが早いです。契約書のドラフト有無や損害賠償保険の加入状況も、比較段階で見えます。
鍵管理条項|紛失時の交換費用は誰が負担するか
鍵の受け渡し方式で契約書の書き方が変わります。物理鍵・キーボックス・スマートロックの3方式、それぞれに固有の穴がある。
物理鍵を業者に渡している場合、紛失時のシリンダー交換費用が発生します。編集部調べで、都内の一般的なディスクシリンダー交換で1〜3万円、電子錠の交換なら5〜15万円が実勢価格帯(2025年時点、鍵屋の見積もり事例より)。オーナー分譲マンションだと管理組合を通す必要があり、時間もかかる。この費用を業者負担にするのか、上限いくらまでにするのか、契約書で決めておく。
浅草の物件で、キーボックスの暗証番号を清掃業者の元スタッフが控えて持っていったらしい、という疑惑が一度ありました。証拠はなく、揉め事にはならなかったけれど、それ以来、契約書に「業者退職者が発生した場合、7日以内にオーナーに通知する」の一文を入れています。ここも穴です。
キーボックス運用で書く条項
- 暗証番号の変更頻度(月1回か、スタッフ変更時か、両方か)
- 暗証番号を知る者の範囲(当該清掃担当者のみ/複数スタッフで共有可)
- 暗証番号漏洩時の責任分担と即時通知義務
- キーボックス本体の設置場所と管理責任者
- 予備鍵の保管場所と使用条件
ここまで書くと契約書が長くなりますが、実際に事故が起きた時の判断基準になる。曖昧なまま運用すると、「そんな話は聞いていない」の応酬になります。キーボックス運用の詳細は、以前キーボックス運用と紛失時の責任範囲で条文レベルまで整理しました。
スマートロックの場合の追加条項
スマートロックはログが残るので責任所在は明確化しやすい。ただし、業者に発行したPINコードの有効期限、清掃完了後の無効化タイミング、アカウント共有の可否、という新しい論点が出てきます。私は「清掃業者用PINは清掃予定日の当日6時から翌6時までの24時間限定」と契約書に書いています。24時間の根拠は、清掃日をまたいでも問題ないように、という実務的な理由。
スマートロックのアカウントを丸ごと業者に渡すのは、絶対に避けるべき。オーナー権限のアカウントを業者に渡すと、鍵のログを業者側で改変できる可能性があるからです。この点は契約書に「オーナー権限アカウントの共有は行わない」と明記します。
再委託条項|業者が孫請けに出す時のルール
これは意外と見落とされる条項。契約した清掃会社が繁忙期に人手不足で、別の業者に丸投げすることがあります。オーナーからすると、契約した相手と実際に来る人が違う。品質も鍵管理も一段リスクが上がる。
民法上、準委任契約は原則として自ら履行する義務がありますが、契約書で再委託を認める文言があれば可能になります。テンプレの契約書に「業者は本業務の全部または一部を第三者に再委託できる」とサラッと書いてあることが多い。ここに気づかず判子を押すと、事実上、誰が来るか不明の状態を承認したことになります。
私は「再委託を行う場合、事前にオーナーの書面同意を得ること。無断再委託が判明した場合、契約解除および違約金として月額委託料の1ヶ月分を支払う」まで書きます。実務ではLINEでの確認で「書面」扱いにしていますが、証跡は残す。
繁忙期の再委託は認めるか
ここは私も迷いがあります。GW・お盆・年末年始の繁忙期、業者側も本当に人が足りない。全面禁止にすると、繁忙期の予約が取れなくなる。「事前通知+オーナー承認+再委託先の身元開示」の3点セットで運用する、というのが今の落とし所です。
再委託先が反社チェック済みか、損害賠償保険に入っているか、その情報を出せるかで、業者側の姿勢が見える。ここで渋る業者は、平時のリスク管理も甘い可能性があります。
秘密保持と個人情報|宿泊者名簿の扱いを契約書で決める
清掃業者にゲスト情報をどこまで共有するかは、契約書で範囲を切っておく。氏名・国籍・宿泊日は必要か、不要か。私は氏名も不要で、チェックアウト時刻とチェックイン時刻だけ共有しています。氏名や国籍を業者側で保持する必然性はほぼない。
個人情報保護法上、宿泊者名簿は住宅宿泊事業者が3年間保存する義務があります(住宅宿泊事業法第8条、施行規則第9条)。これを業者と共有するなら、業者側にも同等の管理義務を負わせる契約条項が必要になる。宿泊者名簿の共有可否は、以前宿泊者名簿と清掃業者の共有で個人情報保護法の一次情報まで確認しました。
秘密保持は退職スタッフにも及ぶ、と明記する。清掃業者を辞めたスタッフが物件情報を持ち出すリスクは、鍵管理と同じ地平の話です。「本業務に従事した従業員が退職した後も、当該従業員に対して秘密保持義務を負わせる措置を取る」の一文で足ります。
写真報告・作業証跡|品質担保を契約書に落とし込む
ここは料金交渉ではなく、事故時の証拠になる部分。清掃業者に写真報告を義務付けるかどうか、契約書に書いておく。私は必須にしています。理由は、レビューで清潔さクレームが来た時に、業者側の作業が完了していたかどうかを、写真で確認できるから。
写真報告があるかないかで、AirCoverや火災保険の請求時の証拠力が大きく変わります。撮影対象は、ベッドメイキング後・水回り3箇所・玄関・冷蔵庫内・ゴミ回収後の空きスペース、の7〜10箇所が実務標準。写真報告の撮影ポイントは、以前写真報告と撮影ポイントで細かく整理しました。
契約書には「毎回の清掃後、指定箇所の写真を清掃完了時刻から60分以内にLINEで送付する。未送付の回はオーナーが清掃品質を確認できないため、次回料金から20%を減額する」まで書くと、業者側の運用がタイトになります。減額まで書くかは判断が分かれますが、遅延の抑止力にはなる。
契約書ドラフトを受け取ったら見る順番
実務では、業者側からドラフトが送られてきます。オーナーが用意することは稀。だから、受け取ったドラフトの読み方に手順があります。
| 読む順 | 条項 | チェック観点 |
|---|---|---|
| 1 | 契約種別(準委任か請負か) | 解除ルールが変わる |
| 2 | 業務範囲・仕様書の別紙 | ここが曖昧だと全部揉める |
| 3 | キャンセル・違約金 | 時刻基準と業者都合の対称性 |
| 4 | 損害賠償の上限と除外 | 故意・重過失の扱い、保険加入義務 |
| 5 | 鍵管理・入室ルール | 紛失時の交換費用負担 |
| 6 | 再委託の可否と事前承認 | 誰が来るかの担保 |
| 7 | 秘密保持・個人情報 | ゲスト情報の共有範囲 |
| 8 | 解約予告期間 | 乗り換え時の縛り |
| 9 | 反社条項・合意管轄 | 形式条項だがあると安心 |
この順に読むと、テンプレの穴が見えます。上から3つ(種別・業務範囲・キャンセル)で7割の揉め事は決まる。ここの解像度が低い契約書は、他がきれいに書かれていても信用しない方がいい。
契約前の質問リストで穴を潰す
契約書だけで全部を担保するのは難しい。事前ヒアリングで穴を埋める。対応時間・キャンセル料・遅延時対応の3軸を中心に、契約前の質問リストは契約前に聞くべき質問リストにまとめました。ヒアリングで返答が曖昧な業者は、契約書もふわっとしている傾向があります。
オーナー側の判断が分かれる論点|印紙と署名の話
ここは正直、私も答えを持っていない領域です。電子契約と紙契約、どちらでいくか。清掃業者は個人事業主が多く、電子契約サービスに慣れていないことがあります。紙で締結すると、印紙税が絡む(継続的取引の基本契約書は4,000円の印紙)。電子契約なら印紙は不要(国税庁の見解、電磁的記録は印紙税法上の課税文書に該当しない)。
私は今、3件のうち2件を電子契約、1件を紙で運用しています。紙の1件は、業者側が「毎年判子で更新したい」と譲らなかった。慣行の問題で、法的にはどちらでもいい。ここは業者側との関係性で決めるしかない、というのが私の今の結論です。
もう一つ判断が分かれるのは、契約書のひな型を誰が用意するか。業者側のひな型に乗ると、業者に有利な条項が並ぶ。オーナー側でひな型を作って業者に飲ませるのは、交渉力が要ります。私はハイブリッドで、業者のひな型をベースにしつつ、5〜10項目の追加条項を差し込む、という運用をしています。正解ではなく、今の落とし所。
ここまで書いた条項を全部一度にひな型に反映するのは、正直しんどい。まず1社と契約書を作り込んで、それを次の業者に読ませて反応を見る、という順番が現実的です。反応が良い業者はそのまま契約、渋る業者は見送る。契約書は業者選びのフィルターとしても機能します。
契約書のドラフトを持っていない業者もいます。マッチング型のサービスで条件を出せば、契約書対応の可否も含めて比較できるので、業者探しの入口として見つける君を使うのが早い場面もあります。
よくある質問
Q1. 清掃業者から契約書のドラフトが出てこない場合、どうすればいいですか?
ドラフトを持たない業者は、個人事業主の小規模業者に多いです。この場合、オーナー側で最低限の覚書を用意して署名してもらう、というのが現実解。業務範囲・料金・キャンセル・鍵管理・損害賠償の5項目を、A4で1枚にまとめた覚書でもいいので必ず紙にする。口約束だけで運用すると、事故が起きた時に何も言えなくなります。
覚書のひな型は行政書士事務所が公開している無料テンプレートを土台にすると早い。私は最初の1件でひな型を作り、以降の業者に使い回しています。
Q2. 損害賠償の上限は「委託料の1ヶ月分」で妥当ですか?
B2Bの業務委託契約では、直近1〜3ヶ月分の委託料相当を上限とする書き方が一般的です(複数の弁護士・行政書士事務所の解説より)。ただし、清掃1回の料金が5,000〜10,000円の民泊清掃だと、1ヶ月分でも数万円程度になり、大きな事故には足りません。
実務では「1事故あたり◯万円を上限とする、ただし故意・重過失の場合を除く」と、金額を絶対値で書くケースもあります。私は50万円を上限にしていますが、物件の価値や家具のグレードで決めるべき数字です。加えて、業者側の損害賠償責任保険への加入義務を明記し、保険で足りない部分を業者が負担する構造にしておくのが安全です。
Q3. キャンセル料は契約書に書いてあれば何%でも請求できますか?
B2Bの契約であれば、原則として当事者間の合意が優先されます。ただし、著しく高額な違約金は公序良俗違反として無効になる可能性が判例上あります。実務相場(当日100%、前日50%程度)から大きく外れていなければ、通常は問題になりません。
逆に、契約書に明記されていない状態で高額なキャンセル料を請求されても、業者側は民法上の実損害を立証する必要があるため、100%請求が通るとは限りません。だからこそ、契約書に違約金として明記する意味があります。
Q4. 家主不在型で管理業者と清掃業者を別々に契約する場合、契約書はどう分けますか?
住宅宿泊事業法第11条により、家主不在型は住宅宿泊管理業者への委託が義務です。国土交通省は「住宅宿泊管理受託標準契約書」を策定しており、こちらが管理業務全般の契約書になります。清掃だけを別の業者に頼む場合、清掃側は独立した業務委託契約書として締結します。
ただし、管理業者が清掃業務を再委託する形で全体を回すケースもあり、この場合は管理業者と清掃業者の間に契約があり、オーナーは管理業者とだけ契約する構造になります。責任の所在が変わるので、どの構造で運用しているかを、契約書のタイトルとセットで確認してください。
Q5. 契約書の内容に不安がある場合、弁護士に見てもらう費用はどのくらいですか?
弁護士・行政書士による契約書レビューは、編集部調べで1件3〜10万円程度が実勢価格帯(2025年時点、東京の中小事務所ベース)。継続的な契約になる清掃業者を1社決めて長期運用するなら、1回だけレビューを入れておく価値はあります。
ただし、費用対効果を考えるなら、まずこの記事で挙げた9項目を自分でチェックした上で、迷った条項だけ専門家に相談する、という使い方が現実的です。清掃1回5,000円のビジネスで、契約書レビューに10万円は割に合わないので、2〜3件をまとめてレビューしてもらうと単価が下がります。詳しい相場の考え方は民泊オーナー向けの一般記事にはあまり出ていないので、複数の弁護士事務所に直接見積もりを取るのが早いです。

